福島第一原発の津波の潮位は10m未満の可能性大

 

 

 


まず、説明の前に、最初に福島第一原発の港の画像を御覧になって南防波堤(画面右の突堤)の位置を覚えておいてください。津波の潮位を考える上で重要なのです。

島第一原発原子炉建屋の南方1km強の高台の展望台に設置されてる「ふくいちライブカメラ」による原発用の港の南突堤の位置と東京電力従業員が展望台から携帯電話で撮影したとする津波の映像と見比べてください。海面に段差が見えます。その段差は、南堤防(右手前の突堤)の存在を示すしています。原発用の港の南堤防(南突堤)の根元側(陸側)の半分程度が付近の海面の段差の原因になっているのです。

尚、海面の段差は南防波堤の半ばから先端は南防波堤でなく、南防波堤から外れて手前右側の海岸に平行になっています。

 


東京電力は福島第一原発の事故の原因は東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の津波でタービン建屋にあった非常用発電機が使用不能になったのが原因と主張しています。

また、東京電力と原子力安全保安院は3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の福島第一原発における津波で標高15mまで浸水したと発表しています。

しかし、東京電力従業員が3月11日に避難していた福島第一原発南方1km強の高台にある展望台から携帯電話で撮影したとする津波の映像には福島第一原発の南防波堤が原因でできた段差が見え、南防波堤よりも南(動画では手前右側)の海面の水位は南防波堤より低く撮影時点では南防波堤より南側の画面手前の潮位は南防波堤の標高未満です。(ただし、南堤防の先端付近は海面下にあり先端付近は段差の原因になっておらず先端付近では段差は南堤防からはずれ港外の画面手前海岸に平行になっています。また、南堤防の根元付近では岸に押し寄せた海水塊によって異様に海面が盛り上がり南堤防の存在が画面では直接には確認できません。)

南突堤の北側すなわち原発用の港内では海面の水位が南防波堤より高く、南防波堤の南側に海水があふれているので潮位は南防波堤の中ほどで南防波堤より若干高いだけと思われます。

原子力安全保安院の資料(注1)の図ではO.P+5.7m程度のようにも見えます。しかし、東京電力に南防波堤の標高を問い合わせたところ、現時点では現場が混乱していて断定できていないとしながらも、堤防の高さは4mから7m程度だろうとの答えでした。wikipedia「福島第一原子力発電所」(注2)によれば、「平均潮位:O.P+0.828m・・・・・南防波堤天端高:O.P.5m」とあり、O.Pが小名浜港工事基準面を示すので、福島第一原発での平均潮位を小名浜港工事基準面からの補正により求めると南防波堤天端高は福島第一原発での平均潮位を基準として約4.2mとなります。

尚、南防波堤の先端付近については、遠いのと画素数が少ないのと手ブレがあり海面が荒れているので識別困難です。

また、津波は画面奥の北東方向から画面手前の南西方向に押し寄せたと推定され、押し寄せた津波の海水の壁が原発用の港内の手前側(岸壁南端)に当たったのか原発用の港内の手前側(岸壁南端付近で海面が盛り上がり原発用岸壁の南の方では岸壁上に押し寄せており海面は標高10m以上あると思われます。また、津波の壁が原発用岸壁南端付近(南側放水口付近)で崖に当たってか巨大な高さ50m以上の水柱が立っています。場所によっては本当に標高15mまで浸水したのかもしれません。

しかし、場所によっては標高15mまで浸水したとしても津波の壁が原発敷地に押し寄せた比較的短い時間だけだった可能性が高いように思われます。そして、標高15mまで浸水したのが比較的短い時間だとすれば、福島第一原発の事故は、海に面した建物の地下に原発の安全上重要な非常用発電機を設置したという重大な過失が原因である事になります。さらに、発電用軽水型原子炉の変更許可申請で審査の基準となる現行の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(注3)では、「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」が求められており、東京電力が福島第一原発(1号〜6号炉)の原子炉の変更に係る原子炉設置変更許可申請書を原子力安全保安院に2011年2月28日に提出(注4)した事から東京電力は「極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」を主張したとみなされ、その点からも業務上の過失が存在します。しかも、産業技術総合研究所の活断層・地震研究センターの岡村行信センター長が福島第一原発の想定津波の見直しを迫ったが聞き入れられなかった事実(注5)も合わせて考えると非常に重大な過失があったのです。

また、上記の考察と原発用の港の岸壁の中央付近の浸水高が11m程度(注1)だった事は浸水高が原発敷地内でも場所によって3m以上の差があった事を示しており浸水が短時間であった事を裏付けています。

そして、原発敷地内でも場所によって浸水高が11m程度(注1)だった事や原発敷地への浸水が短時間であったと推察される事から、(もし仮に標準的構造の検潮所が原発用の港の岸壁の中央付近に存在して機能していたと仮定すれば)原発用の港の岸壁の中央付近の潮位は10m未満であった可能性が高いと思われます。

なぜなら、検潮所は検潮井戸より断面積が大幅に小さい導水菅で海とつながり波長の短い通常の波浪での海面の上下運動をほとんど拾わないような構造になっているからです。


現在のデータの範囲では、潮位5.5mの可能性すらもありうる

wikipedia「福島第一原子力発電所」岩見浩造氏による2011年4月14日 (木) 21:43版 のデータ「平均潮位:O.P+0.828m」「南防波堤天端高:O.P.5m」を前提にすると福島第一原発の南防波堤の標高が4.2mなので、最寄の験潮場である国土地理院・相馬験潮場と同じ応答特性を持ち1mの水位差の回復時間が500秒(注6)で、頑丈で潮位10mまで測定可能な検潮所が福島第一原発2号機タービン建屋前の岸壁に存在し津波でも機能したと仮定し、事前の潮位が0.4mの港内に波高4.5mの津波の先端の水塊が港に突入し、岸壁で海面水位が12mになり、津波先端の水塊の大半が港西南端から飛び出したとし、120秒以内に海面高5.5m以下で安定したとすれば、東京電力の想定範囲であった潮位5.5mの津波であった可能性すらもありえます。

また、国土地理院・相馬験潮場より応答が早く1mの水位差の回復時間が100秒の頑丈で潮位10mまで測定可能な検潮所が福島第一原発2号機タービン建屋前の岸壁に存在し津波でも機能したと仮定し、津波が120秒以内に海面高5.5m以下で安定したとたとしても同様に東京電力の想定範囲であった潮位5.5mの津波であった可能性すらもありえます。


レイリー波(Rayleigh波)による津波の可能性の有無の検証も必要

 

福島第一原発の津波の動画で高さが50m以上と思われる水柱が立ち上ってる事から、今回の東北地方太平洋沖地震によって生じた津波の福島県太平洋岸での第一波が浅海では通常の津波より高速だった可能性があります。もしかしたら、今回の東北地方太平洋沖地震によって生じた津波の福島県太平洋岸での第一波は海底表面での地震波・レイリー波(Rayleigh波)によって惹起された特殊な津波(注7)かもしれません。海底表面でのレイリー波によって惹起された特殊な津波の可能性の有無の検証もすべきでしょう。しかし、今回の東北地方太平洋沖地震によって生じた津波の福島県太平洋岸での第一波が浅海で通常の津波より二倍以上高速であった事を示す直接の証拠が無く、直接的証拠抜きに震源域の海上から福島第一原発用の港の入り口まで通常の津波と同程度の所要時間で到達した(深海での速さが通常の津波と同程度)と結論付けるのは現在の証拠では困難です。将来、地球上の他の海底で巨大海底地震が発生し、浅海で通常の津波の二倍以上の津波で深海で通常の津波と同程度の速さの津波が確実な証拠と共に観測されるまでは、たとえ科学的に可能性が証明されても仮説にすぎません(現時点では「仮説」ですらありません)。


[注意]重要な訂正の履歴

南堤防の高さを約6mとしていましたが、断定を避けました。(2011年4月27日)

wikipedia「福島第一原子力発電所」(注2)での「平均潮位:O.P+0.828m・・・・・南防波堤天端高:O.P.5m」記述を参考に福島第一原発の潮位を基準にして南防波堤天端高を4.2mと算定しました。(2011年4月29日)

また、2011年4月26日版までは、遠いのと動画の画素数が少ないのと手ブレがあり海面が荒れていたので、南堤防の先端の灯台が確認できなかったため3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の地震か津波で破壊されてなくなっていると推定しました。しかし、南堤防の先端の灯台が私の予想以上に小さかったので動画の遠景やGoogleMapの航空写真で見落としていた可能性に気付き調べると3月11日以後も存在してる可能性が高い事が判明したので、当該記述は削除しました。(2011年4月27日)

津波の先端の水塊の港内突入時の速さの仮定について、当初、私は高さ50m以上と推定される水柱の高さから「秒速30m超」としていましたが、福島第一原発の原発用の港の水深から「秒速30m超」もの速さは通常の津波の場合には説明できない速さなので、一旦、「秒速30m超」の部分等を削除しました。ただし、もし仮に、今回の東北地方太平洋沖地震によって生じた津波の福島県太平洋岸での第一波がレイリー波(Rayleigh波)によって惹起された特殊な高速津波(注7)である場合には「秒速30m超」の可能性もあります。(2011年5月1日)


2011年6月28日 (2011年4月23日当初版)

目次

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


御意見はメールもしくは、外部リンクの★阿修羅♪掲示板[ 東電さん、シッポ(突堤)の存在が見えてるみたいですけど ]でコメントしてください。


(注1) 下記の原子力安全保安院の資料参照。

http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110413006/20110413006.pdf

 

(注2) wikipedia「福島第一原子力発電所」岩見浩造氏による2011年4月14日 (木) 21:43版 には下記の記載が登場してます。

>平均潮位:O.P+0.828m

>・・・・・(中略)・・・・・

>北防波堤天端高:O.P.7m 南防波堤天端高:O.P.5m

 

(注3) 「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」は下記の原子力安全委員会HPで公開されてます。

http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si004.pdf

 

(注4) 下記の原子力安全保安院のホームページ記事参照。

http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/230228-7.html

 

(注5) 下記の読売新聞HPニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110330-OYT1T00133.htm

>福島第一原発を襲った今回の津波について、東京電力は「想定外」(清水正孝社長)としているが、

>研究者は2009年、同原発の想定津波の高さについて貞観津波の高さを反映して見直すよう迫っていた。

>しかし、東電と原子力安全・保安院は見直しを先送りした。

>・・・・・(中略)・・・・・

>貞観津波クラスが、450〜800年間隔で起きていた可能性がある。

>産総研活断層・地震研究センターの岡村行信センター長は同原発の想定津波の見直しを迫ったが、聞き入れられなかったという。

 

(注6) 下記の国土地理院ホームページの納田俊弘・川元 智司(2006)著[験潮場井戸の応答特性調査]参照。

http://www.gsi.go.jp/common/000045088.pdf

 

(注7) 下記の松本浩幸・大町達夫他(2000)[ 断層の破壊形態が津波の発生・伝播に及ぼす影響 ](土木学会HPにて公開)参照。

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2000/55-2/55-2-0013.pdf