福島第一原発事故で東京電力が免責されるか?

 

 


以下において、原子力損害の賠償に関する法律」(略称・原子力損害賠償法)の天災免責規定による東京電力への免責適用の可否について論じます。


参考資料

(総務省の運営するe-Gov・法令データ提供システム・原子力損害の賠償に関する法律・参照)

[ 原子力損害の賠償に関する法律・第三条第一項 ]

原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。

ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。

 


1. 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が 「異常に巨大な天災地変」に該当するか否か

原子力損害の賠償に関する法律」(略称・原子力損害賠償法)・第三条第一項但し書きの「異常に巨大な天災地変」という語句ですが、法律条文中にも「原子力損害の賠償に関する法律施行令」(e-Gov・法令データ提供システム参照)条文中にも「原子力損害の賠償に関する法律施行規則」(e-Gov・法令データ提供システム参照)条文中にも特に定義がないので通常の語義や法制定時の国会での議論が基準になります。

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を「隕石の落下」(文部科学省幹部発言)に限定(注1)するというのは裁判では通用しないでしょう。なぜなら、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの条文が「天災又は社会的動乱」とはなっておらず、天災地変又は社会的動乱」となっており、わざわざ「地変」という語句を付け加えている事から、第三条第一項但し書きの「異常に巨大な天災地変」には巨大地震が含まれるのは字義の上から明白です。(goo辞書の「地変」には[火山の噴火や地震、土地の陥没や隆起など、地上に起こる変異。地異。「天災―」]とあります。)

今回の東北地方太平洋沖地震は津波による破壊も含めた破壊規模からすれば、確実な被害記録が残存している17世紀以降の日本政府(江戸幕府を含む)の実効支配地では最大でしょう。(ただし、被災人口では人口密集地で発生した関東大震災の方が多いです。)そういう意味で東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は異常に巨大な天災地変」と認定しうる余地もあるでしょう。しかし、東北地方太平洋沖地震は福島第一原発のあった福島県太平洋岸は岩手県太平洋岸や宮城県太平洋岸に比べ地震の揺れや津波の高さが若干緩やかだった事も考慮せねばなりません。

過去の国会答弁(注2)や内閣府原子力委員会の見解(注2)では、地震の場合には「関東大震災の3倍以上」を基準にしているので、それが基準として有力になるでしょう。3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の加速度は福島第一原発敷地内では震源が福島第一原発から離れており福島第一原発での加速度は4月18日時点での暫定値で2号機の最大加速度が水平550ガル上下302ガル (注3)であり、関東大震災の地震動の推定最大加速度を超えているものの3倍にはなりません。(ただし、東北地方太平洋沖地震の陸上での最大加速度は別の場所で2933ガルなので関東大震災の通説の加速度推定値の300ないし400ガルを大幅に超えています。)尚、原発周辺の震度は6強であったため関東大震災では震度7の地域もあったと推定されているので、地震動の強さだけでは原発周辺地域は関東大震災で最も揺れの激しかった地域より揺れが弱かった可能性もあります。原発周辺の震度は6強であったので地震の揺れだけでは福島第一原発敷地において異常に巨大な天災地変」との認定は困難です。(尚、福島第一原発周辺の震度は6強であったのに福島第一原発での加速度は関東大震災の地震動の推定最大加速度を超えているのは福島第一原発の構造や地盤等に問題があった可能性があります。)

関東大震災時には現在のように地震計が多く設置されておらず、実際の関東大震災の最大加速度は通説の関東大震災の推定値の300ないし400ガルを大幅に超える可能性もあると私は考えています。上記の国会答弁の「関東大震災の3倍以上」は通説の関東大震災の加速度の推定値の300ないし400ガルを前提にしたもので1000ガル以上を意味するものと思われます。しかし、最近は加速度計が多く設置された結果、2000年以降の地震では、2000年鳥取県西部地震(1142ガル)、2003年宮城県沖地震(1304.5ガル)、2004年新潟県中越地震・本震(1750ガル)、2004年新潟県中越地震・余震(2516ガル)、2007年能登半島地震(1300ガル)、2007年新潟県中越沖地震(2058ガル)、2008年岩手・宮城内陸地震(4022ガル)、2011年東北地方太平洋沖地震(2933ガル)、2011年静岡県東部地震(1076ガル)というように、1000ガルを越える測定値が数多く観測され1000ガル程度では異常と言えないという事が判明しつつあります。

ところが、電力各社は原子力損害賠償法制定時に言及された 1000ガル以上の地震動で免責されると考えていると推定され、二年に一度程度の頻度で発生する地震にすら最も地震動の強い場所に当たれば耐えれない設計となっていると思われます。 1000ガル以上の地震動では原子炉建屋が地震の揺れに持ちこたえても1000ガル以上の耐震性向上が困難な制御系や冷却系等の重要部分が損傷を受ける可能性が高いのです。もし仮に、直下型地震で1000ガル以上の地震動の直撃を受け制御系・冷却系が共に機能不全になれば、一時間以内に原子炉が爆発してチェルノブイリを越える大量の放射性物質が放出される危険もあるのです。1000ガル以上の地震動で免責というのは極めて危険な事なのです。

岩手県太平洋岸及び宮城県北部太平洋岸の三陸海岸ではリアス式海岸の入り組んだ地形により津波が湾奥で波高が増幅される事から、明治以降も「明治三陸地震」「昭和三陸地震」「チリ地震」で大津波を体験しています。今回の東北地方太平洋沖地震の津波の遡上高は岩手県宮古市の重茂半島・姉吉地区で38.9mが観測 (注4)され、数値上は本州の津波の遡上高の最高記録を観測しましたが、実は同じ岩手県宮古市の重茂半島・姉吉地区の津波石碑はさらに沢沿いの坂道の上方にあり、「明治二十九年にも、昭和八年にも津浪は此処まで来て」と記されている事 (注5-1) (注5-2)から、研究者が念入りに津波の遡上高を調べた今回の東北地方太平洋沖地震の津波の遡上高よりも過去の「明治三陸地震」「昭和三陸地震」の津波の遡上高が上回っていた可能性もあります。

尚、沖縄県石垣島では琉球王国時代の1771年4月24日の「明和の大津波」で遡上高85.4m (注6-1) (注6-2) を記録しています。これは今回の東北地方太平洋沖地震の遡上高の38.9m (注4)大幅に上回っています。ただし、この記録は琉球王国時代の28丈2尺という数値を換算したものです。1771年というのは日本の近代的地図製作者の伊能忠敬が測量を学ぶ以前だったためと津波の遡上高の異常な高さから測量の精度等に疑義を示す津波研究者もいますが、17世紀以降、琉球王国を実質的に支配した薩摩藩から測量技術がもたらされ (注6-2)、琉球王国の測量技術水準が当時としては相当程度に高度なものであった事が歴史的事実として判明 (注6-3) (注6-4) しています。また、1771年当時の薩摩藩主だった島津重豪 (注6-5) は自ら長崎で蘭学を学んでおり薩摩藩に実質的に支配されていた琉球にも西洋の測量技術が伝えられた可能性が高いと思われます。精密に角度の測定ができれば精度の高い標高の測量が可能なはずであり、琉球王国は、0.9375度を単位とする独自の角度の単位を持つ分度盤 (注6-3)(注6-4)を持っていたとの事であり、その半分の角度が当時の琉球の角度誤差の程度だとして、18世紀末にオランダから六分儀または八分儀を輸入して測量に流用し1度の60分の1の「分」未満の角度まで計測できたであろう江戸時代末の幕府の測量よりは角度の誤差がはるかに高いとしても、二倍以上もの標高誤差があったとは考えられません。

東京電力の主張では今回の福島第一原発事故は東北地方太平洋沖地震によって生じた大津波で引き起こされたと主張してるため大津波による免責では、石垣島で琉球王国時代の1771年4月24日の「明和の大津波」で記録した遡上高85.4m以上の遡上高もしくはそれに匹敵する潮位が要求されるのかが問題となります。

原子力損害の賠償に関する法律」の法制定時における第038回国会 科学技術振興対策特別委員会での異常に巨大な天災地変」の解釈は「人類の予想していないような大きなもの」(我妻栄・東京大学名誉教授兼原子力委員会原子力災害補償専門部会長・・・・・著名な民法学者)との事です(注7) 。しかし、後述のように地震や津波の場合には規模の巨大さより局所的な強度が原発の損傷に大きな影響を与えるので、条文の「巨大」という文言は地震や津波の場合には問題があります。

原子力損害の賠償に関する法律」の法制定時における議論の解説については、FJneo1994氏の[ 企業法務戦士の雑感・2011-04-14 ] と

text2氏の[ 原子力損害賠償法を検討してみるブログ ]の方が詳しくてわかりやすので御参考にされる事を勧めます。

しかし、今回の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による福島第一原発事故発生まで政府が原発推進策を採ってきた事は解釈において考慮されるべき要素となりえます。たとえ、原子力安全委員会の制定した電力会社に甘い「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」が最低基準を示すものとしても、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」では「震源を特定せず策定する地震動」でマグニチュード7の直下型地震すら前提としておらず、上記の原子力損害賠償法制定時における原子力委員会原子力災害補償専門部会長の我妻栄・東京大学名誉教授の「人類の予想していないような大きなもの」との解説による基準との乖離が大きすぎ、原子力安全委員会の責任すなわち国の責任も考えれば「人類の予想していないような大きなもの」との基準は法制定後最初の問題事例となる今回の福島第一原発事故では厳しすぎると私は考えます。そして、今回の福島第一原発事故では東京電力が原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの「異常に巨大な天災地変」による免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させた事により大幅な被害の拡大を招いており、免責の可否の判断で「異常に巨大な天災地変」の判定基準を緩く捉え、東京電力が「異常に巨大な天災地変」による免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させた事に関して免責の可否の判断をした方が今回の福島第一原発事故の本質に合致すると私は考えます。

また、条文の文言が「巨大」となっており局所的な強度より規模の大きさに重点を置いた表現となっている事にも注意を払うべきです。(ただし、原発に対する地震や津波の被害の場合には規模より局所的な強度の方が重要ですので地震や津波被害の場合には解釈において条文の「巨大」という文言を「極めて強力」と読み替えるべきという考え方もありえます。)

さらに、岩手県太平洋岸及び宮城県北部太平洋岸の三陸海岸での大津波や石垣島の「明和の大津波」 (注6) では津波が地形(海底地形を含む)によって増幅されており福島県太平洋岸のように単調な直線的海岸線に面した福島第一原発との単純比較には問題があります。また、遡上高は潮位より大幅に高くなりやすい傾向があります。ただし、瞬間的な敷地への浸水の場合には15mの高さまで浸水しても潮位が10m未満であった可能性があります。私は潮位が10m未満であったと考えています。別記事 [ 福島第一原発の津波の潮位は10m未満の可能性大 ] 参照。

もし仮に、福島第一原発付近で標準的構造の検潮所が存在し機能していたと仮定して最高潮位が10mを越えていたであろうと今後の調査で推定され、かつ、東京電力が「明和の大津波」が石垣島の地形(海底地形を含む)の特殊性によって遡上高を大幅に増大させたと立証し、かつ、福島県太平洋岸ではそのような大幅増幅がありえないと立証できるならば、今回の東北地方太平洋沖地震による福島県太平洋岸での大津波を「異常に巨大な」大津波と認定される余地があります。

上記の条件を満たし、かつ、今後の調査によって、今回の東北地方太平洋沖地震による大津波の福島県太平洋岸での潮位が最終氷河期以降で最高の潮位であったと認定されれば、今回の福島第一原発事故について「異常に巨大な天災地変」と認定するのが妥当と私は考えます。(私は今回の東北地方太平洋沖地震による大津波の潮位が福島県太平洋岸では過去二千年で最高の潮位だった可能性が高いと推測していますが縄文海進があったため最終氷河期以降での最高潮位になったか否かについては福島第一原発周辺の洪積台地上での過去の津波痕跡の調査が必要と考えています。)

また、もし仮に、今回の東北地方太平洋沖地震によって生じた津波の福島県太平洋岸での第一波が通常の津波ではなく、海底の表面(海底と海水底部との境界)でのレイリー波(Rayleigh波)によって惹起された特殊な津波(注8)で浅海では通常の津波の二倍以上高速であった事を東京電力が完全に立証できれば、「異常に巨大な天災地変」と認定すべきと私は考えます。しかし、3月11日の津波発生から三ヶ月以上経っても福島第一原発周辺での津波の速さを直接確認できる映像は公開されておらず、海底でのレイリー波が陸上より大幅に遅い事も確認されておらず、しかも、震源域の海上から福島第一原発用の港の入り口まで通常の津波と同程度の所要時間で到達した(深海での速さが通常の津波と同程度)と結論付けるのは現在の証拠では困難です。そういうわけで、現時点では学問上の仮説として認められる余地はあっても裁判で認定しうるレベルではありません。ただし、裁判の期間中に世界のどこかでマグニチュード9クラスの巨大海底地震が発生し、信頼できる映像等によって浅海でのみ通常の津波より二倍以上の速さになる津波が確実な映像証拠と共に確認され、かつ、その特殊な津波の深海底の海上での速さが通常の津波の速さと同程度である事が確認された場合のみに限定すべきです。尚、この事を期待しての東京電力の裁判引き伸ばしは認めるべきではありません。


2. 風評被害の場合には原子力損害賠償法が適用されません(ただし、類推適用の可能性はあります)

[ 原子力損害の賠償に関する法律・第二条第二項・抜粋 ]

この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは

毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。

原子力損害賠償法では風評被害は「原子力損害」に含めていません。そのため、原子力損害賠償法が適用されない可能性があり、原子力損害賠償法で規模から「異常に巨大な天災地変」と認められても不可抗力でなければ免責されません。しかし、損害賠償させるには過失を立証せねばならないのです。また、被害者・原告は原発事故と風評被害の間で相当因果関係も立証せねばならないのです。

ただし、今回の福島第一原発事故では風評被害については、被害者が極めて多数になる事や相当因果関係の立証が困難な事などから特別法による解決が望ましいのですが、現在の政治状況では特別法制定も困難なので、無理な解釈でも原子力損害賠償法の類推適用がされる可能性もあるかもしれません。


3. 外洋に面したタービン建屋地下に非常用発電機を設置した事について

東京電力は、今回の福島第一原発の事故は、東北地方太平洋沖地震によって生じた大津波によってタービン建屋が浸水し、タービン建屋にあった非常用発電機が使用不能になった事が原因と主張しています。

しかし、非常用発電機はタービン建屋の地下にあり、海に面した建物の地下に原発の安全上重要な機器を設置したのは過失です。特に、たとえ瞬間的に標高15mまで浸水したとしても、(標準的構造の検潮所が原発用の港の岸壁の中央付近の原発敷地内に存在し機能していたと仮定した場合の)津波の潮位が周囲の地面の標高10mより低かった場合、極めて重大な過失です。なぜなら、そのように浸水しやすい構造なら、大津波より発生頻度がはるかに高い大型台風の直撃を大潮満潮時に受けても浸水した可能性があるからです。ちなみに、原発の安全対策上重要な非常用発電機を外洋に面した建屋の地下に置くという日本ではシロウトですら気付く欠陥設計は、原発プラントをアメリカ企業から導入したため、大津波がなく巨大竜巻が発生する北米大陸中部以東の地域を念頭に置いた設計が原因だったそうです(注24)

しかも、産業技術総合研究所の活断層・地震研究センターの岡村行信センター長が福島第一原発の想定津波の見直しを迫ったが聞き入れられなかった事実(注9)や現行の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」で「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」が求められている事も考え合わせると極めて重大な過失です。

重過失が存在する場合には天災地変による免責は適用されないと考えるべきです。


4. 免責規定悪用によって被害拡大させた分は免責されない

しかし、東北地方太平洋沖地震直後に東京電力が防災を最優先にして対策をすれば、放射性物質の放出・流出が少なくて済んだ事から「異常に巨大な天災地変」が起きた事をもってただちに免責とするのは不合理なのです。

問題は、東京電力が原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きによる免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させたために被害を増大させたのです。法的には、原子力損害賠償法第三条第一項但し書きは不可抗力を明示していないので単に「異常に巨大な天災地変」が起きれば即免責されるのか、それとも「異常に巨大な天災地変」によってだけでなく重過失によって被害を拡大させ場合には不可抗力では無いので免責されないのかが問題となるでしょう。経済的には巨額の損害賠償を税金で負担するのか東京電力の株主が負担するのかの問題になります。東京電力が原子力損害賠償法・第三条の免責規定を奇貨として防災より原子炉の再使用の容易性を優先(注10)させ、被害を大幅に拡大させたなら免責されないと解釈すべきです。

最大の問題は事実認定です。東北地方太平洋沖地震発生当日の2011年3月11日に各原子炉に中性子を吸収し核分裂連鎖反応を抑えるホウ酸を注入しなかった(注10)事によって核分裂連鎖反応停止が遅れ発熱大幅増加を招いたか否かです。免責規定がなければ巨額の損害賠償を恐れ、安全最優先で大地震と大津波で安全上重要な設備に重大な損傷が生じればすぐにホウ酸を注入したはずです。ところがホウ酸注入が遅れたのです。そのホウ酸注入の遅れが被害増大したかの事実認定がポイントなのです。

私は3号炉について3月13日・14日に核分裂連鎖反応が起きた事を別記事[3月14日爆発時放出キセノン133は前日の弁開放後の連鎖反応で生成]で示しました。それによって、3月14日に起きた3号機建屋爆発で大気中に放出された放射性物質によって引き起こされた被害については東京電力が損害賠償責任を負うべきでしょう。

しかし、重大な漁業被害を引き起こすであろう海水への放射能汚染水流出の最大の原因が2号機の損傷と現時点では推定される事から、2号炉で核分裂連鎖反応が起きて損傷を引き起こしたか否かの事実確認が重要になります。私は2号炉でも核分裂連鎖反応が起きた可能性があると考えていますので、私は政府に対し確実な証拠を得るために福島第一原発2号機タービン建屋地下で核分裂連鎖反応で生成される気体のキセノン133の放射能濃度測定を早急に実施する事を強く要求します。(また、ついでに福島第一原発1号機タービン建屋地下でもキセノン133の放射能濃度測定を早急に実施する事を要求します。) ちなみに、私は4月11日に東京電力に福島第一原発1号機・2号機タービン建屋地下の床付近のキセノン133の放射能濃度を早急に測定・公表する事を要求しましたが、東京電力はそれに難色を示しています。

また、使用済み核燃料プールを原子炉建屋上部に造ったのは異常に巨大な天災地変」による免責を前提にした経済的理由を安全対策に優先させた結果ですが、異常に巨大な天災地変」による免責が法定されてなければ大地震発生時に重大事故を引き起こし巨額の損害賠償の原因となるような設計はなされなかったはずです。よって、たとえ国の審査で長年にわたって許容されていたとしても国の審査は最低基準である事を考慮すれば、使用済み核燃料プールを原子炉建屋上部に造った事による被害拡大も免責の対象とはなりえないでしょう。

さらに、国際原子力機関(IAEA)元事務次長でスイスの原子力工学専門家であるブルーノ・ペロード氏から電源と水源の多様化や水素爆発防止対策等をとるようにアドバイスされたのに、その忠告を無視して東京電力は対策をしなかったため今回のような重大事故を招いており 、ブルーノ・ペロード氏の弁によれば犯罪的人災(注25-1)(注25-2)との事だそうです。これは東京電力が、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きによる免責規定を奇貨として防災より対策費節減したのが原因と思われます。


5. 事前の過失について

尚、原子力損害賠償法第三条第一項本文が過失の有無にかかわらず責任を規定している事から、原子力災害の場合には通常の災害の過失責任より重い無過失責任を要求しているため、上記のような原子力損害賠償法第三条第一項但し書きの免責規定を奇貨として悪用し事後的に被害を拡大させた場合のみならず、事前の過失によって被害を発生させていない事が要求されるでしょう。

まず、東京電力は事前に耐震対策が不十分である事を知りながら、東京電力が他の電力各社と共同で設立した電力中央研究所の研究員・井上大栄が不正な論文を発表(注11)した事により、東京電力が低い耐震性を正当化して耐震性が低いまま操業し、それが原因で大津波被害だけの場合に比べてより大きな被害を発生させた疑いがあるのです。東京電力は地震後に発生した大津波による電源喪失が事故の原因のすべてであるかのごとく公表していますが、実は地震発生時の地震動によって大津波到達以前に1号機の配管が破損(注12)しており、それによって1号機の冷却水の水位が低下(注13)し、電源喪失のみの場合より大きな被害を発生させた疑いがあります。

また、大津波が想定外だったと東京電力は主張していますが、産業技術総合研究所の活断層・地震研究センターの岡村行信センター長が福島第一原発の想定津波の見直しを迫ったが聞き入れられなかった事実(注9)があり、もし仮に、この事実が過失と認定され事故の被害との因果関係が認定されれば東京電力は全面的な損害賠償責任を負うでしょう。

尚、3号炉について3月13日・14日に核分裂連鎖反応が起きた原因の特定は困難ですが、もし仮に原因が制御棒不完全挿入だとすれば、安全最優先なら緊急地震速報を利用して地震波到達前に原子炉停止させるべきところ誤報で停止させると経済的損失発生するので利用せず、福島第一原発敷地内の地震計で地震波到達を感知してから停止させていた事も東京電力が原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させたために被害を増大させた事になります。


6. 天災免責規定の危険性

尚、原子力損害賠償法第三条第一項但し書きの免責規定が上記の被害拡大を招いただけでなく、原子力損害賠償法第三条第一項但し書きの免責規定を奇貨として、東京電力は福島原発の被害拡大防止対策をせずに作業員全員の撤退(注14)をしようとして、たまたま大学時代に応用物理を専攻し原子力(分野)に強いと自負する菅首相(注15)に「撤退したときは東電は100%潰れる」と免責規定不適用を以って脅され(注16)撤退を思い止まり被害拡大防止対策をしたのです。被害拡大防止せず放置撤退しても免責されたなら撤退していたのです。

この撤退の画策も、東京電力が異常に巨大な天災地変発生なら即免責されると考えたのが原因でしょう。撤退して被害拡大させても拡大した被害についても免責されると考えたからだと推測されます。

危険を伴う作業を社員や協力企業社員にさせれば短時間の作業に対して人件費を大幅に割り増しせねばならず、死傷したり後遺障害が出れば高額の補償せねばならないからです。(外部の住民に対しては免責されても内部の従業員等に対しては免責されないとの計算が働いたものと思われます。)もし、東北地方太平洋沖地震が起きた3月11日以前に支持率低迷していた菅首相が辞めていて後任の首相が原子力に疎ければ東京電力に丸め込まれていたと思うと空恐ろしい事です。

今回の福島第一原発事故で原子力損害賠償法第三条第一項但し書きの天災免責規定がいかに危険で廃止すべき規定かという事が明らかになったのです。

ちなみに、福島第一原発担当の原子力安全保安院の検査官7人全員は福島第一原発事故後に福島第一原発から約60km離れた福島市まで実際に避難していた(注17)そうです。原発の専門家は原発事故の危険性を認識しているので「敵前逃亡」するのでしょう。


7. 東京電力による天災免責規定援用と権利の濫用

東京電力は、原子力損害賠償法第三条第一項但し書きの免責規定の存在に安心して、防災より自社の経済的便益を優先しており、原子力損害賠償法第三条第一項但し書きの免責規定援用するのは権利の濫用として許されない可能性があります。すなわち、免責規定悪用によって被害拡大させ部分のみだけでなく、不可抗力部分も免責されないとする考え方もありうるでしょう。

尚、原子力損害賠償紛争審査会や裁判所が、東京電力が免責規定を援用するのは権利の濫用として許されないと判断する場合には、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの「異常に巨大な天災地変」に該当するか否かの判断を示す必要は無いと私は考えます。


8. 関連学会・原子力安全委員会委員への不正な働きかけの有無の調査の必要性

まず、東京電力によれば今回の福島第一原発事故は東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による想定外の大津波が原因とし、土木学会の指針に基づいて対策していたと主張していますが、この土木学会指針とは、環境エネルギー政策研究所 客員研究員・田中信一郎博士によれば、土木学会原子力土木委員会津波評価部会が2001年に取りまとめた報告書「原子力発電所の津波評価技術」であって、実は、その土木学会原子力土木委員会は電力業界関係者等が委員・幹事の大半を占めていた(注18)(注19-1)のです。そして、土木学会原子力土木委員会津波評価部会が2001年に取りまとめた報告書「原子力発電所の津波評価技術」(注19-2)(注19-3)(注19-4)の内容を見ても原子力工学や発電の専門知識の必要な内容は存在せず、単に「取水路の応答」の文言があるにすぎません。「取水路の応答」は原子力発電所の取水路に関する事柄であっても、実際には津波研究者の熟知する検潮所の導水菅の応答と同様に考える事が可能であり、かくも多数の電力業界関係者を委員にする必要性がなかった事が報告書「原子力発電所の津波評価技術」自体からもわかるのです。かくも露骨な委員・幹事構成をしたのは、中立な委員が過半数を占めると既存の原発が将来発生する可能性のある大津波に耐えれないとの結論が出された場合に既存の原発を廃棄するか巨額の大津波対策工事をせねばならない事を危惧し、既存の原発でも津波に耐えうるとの結論が先にあったからと思われます。すなわち、大津波が「想定外」だったのではなく、電力業界が既存の原発が耐えれない大津波の発生を予見していたからこそ電力業界関係者等が委員・幹事の大半を占めるような露骨な委員・幹事構成をしたのでしょう。そして、実際に、「原子力発電所の津波評価技術・附属編-1(資料編)」(注19-3)p.42では上述した1771年に石垣島を襲った明和の大津波の遡上高(注6-1) (注6-2) を「25m 余」と論拠も示さず低く見積もっているのです。

また、電力中央研究所の研究員・井上大栄の不正な論文発表(注11)に関して東京電力の関与の有無の調査をすべきです。また、関連学会関係者や原子力安全委員会委員に何らかの不正な働きかけをしていなかったかの調査もすべきです。なぜならば、私が地学関連分野で知る範囲だけでも原子力安全委員会が制定した現行の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」にはマグニチュード7の原発直下地震対策が盛り込まれず、原発基礎岩盤に伝わる地震波到達のタイムラグによる(すなわち位相差による)基礎岩盤内での変位の差を考慮し冷却系・制御系も含めた全体としてのシミュレーションまで要求されておらず、さらには以前の昭和56年制定の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」にあった原発の重要な建物・構築物は岩盤に支持させなければならないという規定の消滅という条件緩和の改悪まであったからです。

東京電力等の電力各社は、地震が原因での原発事故では、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の条件さえ満たせば、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの条文での「異常に巨大な天災地変」としての免責が受けれると考えていたと推定され、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の条件の緩和に関与したか否か考慮されるべきだからです。


9. データ隠匿・改竄の有無の調査の必要性

電力各社は過去においてデータの捏造をしています。東京電力も2002年には「原発トラブル隠し事件」が発覚(注20)し、水力発電用ダムについても2006年にデータ改竄が発覚(注21)しています。東京電力には遵法意識の低い企業風土があるのです。

そのため、東京電力が今回の事故で開示した資料に改竄がないか十分な調査が必要です。企業の存亡がかかるほどの巨額の損害賠償や刑事責任がかかってますので、通常時よりはるかに隠匿・改竄の動機が強いからです。

特に、制御棒挿入の遅れによる不具合を示すデータや3号炉以外では許可されていないMOX燃料を他の原子炉で使用していなかったかについては厳重に調べる必要があります。


10. 高濃度放射能汚染水保管場所確保のための大量の低濃度放射性廃液の意図的海洋投棄が緊急避難の要件を満たすかの確認の必要性

東京電力は高濃度放射能汚染水保管場所確保のための大量の低濃度放射性廃液の意図的海洋投棄をしました。これについて緊急避難の要件が満たされるか確認する必要があります。タンカー購入して一時保管し、その後処理する余裕がなかったのか等の他のより害の少ない方策の有無や緊急性を東京電力は十分に立証する義務があります。特に、緊急避難を口実に高額の費用を要するタンカー購入して一時保管後処理する方法を回避しようとして緊急性が低いのに意図的に海洋投棄していなかったか厳密に調査すべきでしょう。


11. 「長期間にわたる全交流動力電源喪失に対する考慮不要」とした安全設計審査指針(原子力安全委員会決定)について

「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)の「指針27.電源喪失に対する設計上の考慮」の解説において「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、・・・・・(中略)・・・・・考慮する必要はない。」(注26-1)とした部分について班目春樹原子力安全委員会委員長は「明らかな間違いだった」と福島第一原発事故後に発言した(注26-2)そうです。

そこで、「長期間にわたる全交流動力電源喪失に対する考慮不要」とした安全設計審査指針の解説部分と今回の福島第一原発事故との因果関係が問題になります。

もし仮に、東京電力が上記の指針の解説がなければ福島第一原発で「長期間にわたる全交流動力電源喪失」に対する対策をしたか原子力発電を諦めたかのいずれかが明白であると証明しえたならば、全交流動力電源喪失によって被害拡大した部分について国も共同不法行為として連帯責任を追うべきです。しかし、東京電力は原発によって莫大な利益を上げ専門知識を有すべき企業だっただけでなく、全交流動力電源喪失につき外洋に面したタービン建屋の地下に非常用発電機を設置した重大な過失や震度6強の地震動で外部電源受電鉄塔倒壊した過失があったので、もし仮に上記の指針の解説がなければ福島第一原発で「長期間にわたる全交流動力電源喪失」に対する対策をしたのは明白であると証明しえたとしても免責すべきではないでしょう。

尚、現実には「長期間にわたる全交流動力電源喪失」に対する対策には冷却系維持のための強烈な地震動に耐えうる巨大な容量の直流電池もしくは無電源の流水源となる貯水ダムもしくは地下水の自噴井等の高額な設備投資もしくは長期の冷却系機能不全でもメルトダウンしない原子炉建設が必要となるため、コスト面で引き合わない可能性が高く、斑目委員長が個人的に東京電力が免責されるように「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)の非を認めた疑いがあります。


12.  東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以後の政府の過失によって被害拡大した部分がある場合について

東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以後の政府の過失によって被害拡大した可能性もあります。たとえば、原子力安全・保安院は福島第一原発3号機建屋爆発直後で爆発で放出された放射性物質の大部分が未だに降下する以前の14日午後0時すぎに記者会見し、福島第一原発3号機の爆発に関し、「(3号機)1階の建屋近くのモニタリングでは、1時間当たり20マイクロシーベルトで、年間浴びて全く問題のない数値の50分の1程度の小さなものだった」と述べ(注22)福島第一原発周辺住民を安心させた事によって、14日正午時点で避難をしていなかった福島第一原発周辺住民の一部の避難が遅れ放射性物質の大量降下時(注23)に放射性物質大量吸入した可能性があります。また、マスコミや御用学者と共に、一時間当たりの空間放射線量の値と医療検査用X線撮影やCTスキャンの被曝量を比較し、一時間当たりの空間放射線量値がガス・マスクか空気ボンベを使用した場合の一時間のみの外部被曝の数値でありガス・マスクや空気ボンベを持たない一般住民の呼吸による内部被曝や長時間被曝を考慮してない数値である事を説明せず、安全性のみ強調した事によって避難が遅れた福島第一原発周辺住民がいた可能性もあります。この場合も、被害の直接の原因は福島第一原発事故であり、また、政府が誤った広報をした場合に東京電力は訂正可能であったため東京電力は政府の広報の誤りを訂正すべきでしたので、上記のようなケースでは政府の過失によって被害拡大した場合でも東京電力は免責されません。しかし、この場合は被害拡大した部分については国も連帯責任を負うべきです。

尚、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生当日の3月11日に関西にいた東京電力社長が防衛大臣の許可無く航空自衛隊小牧基地(愛知県)から自衛隊輸送機に乗せてもらって東京に戻る途中に北沢防衛大臣にUターンさせられ東京本社に戻るのが遅れた件については、仮に自衛隊機で速やかに東京電力社長が東京本社に戻れていたとしても社長決断で速やかにホウ酸投入したか疑問だった事からUターンによって被害拡大したとは考えにくい事から政府の政治責任が問題となる可能性はあっても法的責任は発生しないと考えるべきでしょう。


13. 他の電力会社等の共同不法行為責任の可能性について

原子力発電をしたり計画している企業や電力中央研究所等の電力関係者が土木学会原子力土木委員会委員の大半を占めて作成した報告書「原子力発電所の津波評価技術」によって、日本の原子力発電所の津波対策が不完全になった疑いが濃厚です。これについては、電力関係者が土木学会原子力土木委員会委員の大半を占める必要性が無いのに大半を占めた事から原子力発電をしたり計画している企業や電力中央研究所等の共同不法行為であると推定すべきでしょう。他の電力各社等が潔白を証明できなければ他の電力各社等にも共同不法行為責任を負わすべきでしょう。


14. 政治的免責の可能性について

東京電力が免責を主張し損害賠償を引き伸ばした場合、現行法では裁判での解決しかなく、裁判で決着するには日本の裁判が非常に遅いという事だけでなく、長期間経過後に放射線被曝等の被害の結果が出る事が予想されます。そのため、被害者救済のためと称して与野党の原発推進派議員が結束して、国が福島第一原発事故の損害賠償の一時的立替払いする法律を制定する可能性があります。しかし、その場合、賠償を受けた被害者はもはや東京電力に対して民亊訴追せず、東京電力の責任追及の世論も弱くなるでしょう。そして、そのような立替払いの特別法制定の場合には、立法内容ににもよりますが、立て替えた損害賠償について国が東京電力に支払いを求めて民亊提訴する事になる可能性が高いでしょう。その場合、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの「異常に巨大な天災地変」については東京電力に立証責任があっても裁判所が甘く認定する可能性があります。それ以上に問題なのは、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きによる免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させたために被害を増大させた事や東京電力の重過失によって被害拡大させた事については国が立証責任を負わされ、将来の政府が馴れ合い訴訟で東京電力の「人災」の追及を手抜きして、世論の追及の弱くなった数十年後に免責判決で決着する可能性も大いにあります。


15. 損害賠償費用の電力料金への転嫁の可能性について

東京電力が原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きによる免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させたために被害を増大させた事や東京電力の重過失によって被害拡大させた事から、損失は全面的に株主が負担すべきであり、東京電力を存続させて電力ユーザーへ転嫁させるのは、地域独占企業としての特殊な立場の悪用であり、東京電力本体が免責されなくとも電力料金への転嫁を認めれば株主が経済的に相当程度の免責を不当に得たのと同様の効果をもたらします。

尚、本日(2011年6月4日)閣議決定された「原子力損害賠償支援機構法案」(注28)は東京電力を存続させ、結果として本来は株主が負担すべき損害賠償の損失を電力料金値上げによって電力ユーザーへ転嫁させる将来の危険があるので問題があります。


16. 暫定的国有化のための特別立法の必要性について

混乱無く問題解決するには東京電力の十年程度の期限を区切っての暫定的国有化のための特別立法が必要かもしれません(注27)。放射能後遺障害は世代を超えて発症する可能性はありますが、十年程度で賠償総額の概算額算出は一応は可能になるでしょう。その区切った期限の到来時に残余財産が残ると推定されれば民間企業として存続させ、残余財産が無いと推定されれば完全国有化すべきでしょう。

もし仮に、その国有化の特別立法が東京電力の株主の財産権を不当に侵害するものであれば、不服な東京電力の株主は憲法の財産権保障規定に基づいて国を提訴すれば良いのです。


特に参考にしたサイト

[ 原子力損害賠償法を検討してみるブログ ] (作成者・text2氏


2011年6月18日 (2011年4月19日分離当初版 ・ 記事分離前の 原子力損害賠償法・第三条の天災「地変」免責規定が被害を増大させた(4月10日当初版) )

[ この記事は、別記事[ 原子力損害賠償法・第三条の天災「地変」免責規定が被害を増大させた(2011年4月19日版) ]から2011年4月19日に分離した記事です。 ]

目次

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


(注1) 下記の毎日新聞社HP記事参照。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20110324ddm008040086000c.html

>「異常に巨大な天災や社会的動乱」が原因の場合は、例外規定として電力会社の代わりに国が賠償するが、

>政府は「隕石(いんせき)の落下や戦争などを想定したもの」(文部科学省幹部)と例外規定は適用しない方針。

 

(注2)  下記の内閣府原子力委員会HPの「第3回原子力損害賠償制度専門部会議事次第」記事参照。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo03/siryo3-1.htm

>異常に巨大な天災地変は、日本の歴史上余り例のみられない大地震・大噴火・大風水災等をいう。

>過去の国会答弁では、関東大震災の3倍以上と述べられており、関東大震災は巨大ではあっても

>異常に巨大なものとはいえないと解している。

 

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo03/siryo3-6.htm

>「異常に巨大な天災地変」とは、一般的には日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等が考えられる。

>例えば、関東大震災を相当程度(約3倍以上)上回るものをいうと解している。

 

(注3) 農林水産省HPでの公開資料・[ 東日本大震災における原子力発電所の影響と現在の状況について ]4月18日付け(東京電力作成資料)参照。

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/kaigi/01/pdf/s012.pdf

 

(注4) 下記の読売新聞HPニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110415-OYT1T00389.htm?from=main1

> 東日本大震災の津波が、岩手県宮古市の重茂(おもえ)半島で38・9メートルの高さまで達していたことが、東京海洋大学の岡安章夫教授の調査で分かった。

> 岸から400メートル離れた同半島の姉吉漁港近くの山の斜面で、津波によって木が倒れていることを発見した。

 

(注5-1)  下記の河北新報社HPニュース記事参照。

http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110410_21.htm

>◎宮古・姉吉地区/「此処より下に家を建てるな」 石碑の警告守る

>・・・・・(中略)・・・・・

>津波は今回、漁港から坂道を約800メートル上った場所にある石碑の約70メートル手前まで迫ったという。

>・・・・・(中略)・・・・・

>姉吉地区に立つ「大津浪記念碑」の全文は次の通り。

>高き住居は児孫の和楽/想(おも)へ惨禍の大津浪/此処(ここ)より下に家を建てるな/

>明治二十九年にも、昭和八年にも津浪は此処まで来て/部落は全滅し、生存者僅(わず)かに前に二人後に四人のみ/

>幾歳(いくとし)経るとも要心あれ

 

(注5-2) 下記の読売新聞HP記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110329-OYT1T00888.htm

> 「此処(ここ)より下に家を建てるな」――。

>東日本巨大地震で沿岸部が津波にのみこまれた岩手県宮古市にあって、重茂半島東端の姉吉地区(12世帯約40人)では全ての家屋が被害を免れた。

>1933年の昭和三陸大津波の後、海抜約60メートルの場所に建てられた石碑の警告を守り、坂の上で暮らしてきた住民たちは、改めて先人の教えに感謝していた。

 

(注6-1)  下記の「さとやま八剣山」ホームページでのS. KAMEWADA氏作成 [ 八重山の明和大津波 ] PDFファイル参照。

http://www.raax.co.jp/sato8/yaeyamaootsunami.pdf

 

(注6-2) 下記の防災システム研究所ホームページでの山村武彦氏作成資料[ 1771年・八重山地震・明和の大津波 ]参照。

http://www.bo-sai.co.jp/yaeyamajisintsunami.html

 

(注6-3) 下記の沖縄しまたて協会ホームページでの安里進・沖縄県立芸術大学教授作成記事参照。

http://www.shimatate.or.jp/20kouhou/simatatei/53/04-07.pdf

 

(注6-4) 下記の沖縄しまたて協会ホームページでの安里進・浦添市教育委員会 文化課課長作成記事参照。

http://www.shimatate.or.jp/20kouhou/simatatei/sima_18/sima18-04.pdf

>こうした測量技術は、伊能忠敬の測量技術に匹敵するもので、王府が沖縄諸島を徹底して測量したのは、

>忠敬が全国測量をした60 年余りも前のことであった。

 

(注6-5) wikipedia「島津重豪」参照。

 

(注7) 下記の国会会議録検索システムHPの [ 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号 ] 参照。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/038/0068/03804260068014a.html

>第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号

>昭和三十六年四月二十六日(水曜日)

>・・・・・(中略)・・・・・

>委員外の出席者

>・・・・・(中略)・・・・・

> 参  考  人

> (東京大学名誉教授、原子力委員会原子力災害補償専門部会長)我妻 榮君

>・・・・・(中略)・・・・・

>○我妻参考人

>・・・・・(中略)・・・・・

>おっしゃる通りです。不可抗力という言葉にもずいぶんいろいろ議論があるようですけれども、

>超不可抗力ということなんですね。ほとんど発生しないだろう。ほとんど発生しないようなことなら、

>何も書く必要はないだろうということにもなりますけれども、これは先ほどから繰り返して申しますように、

>無過失責任は私企業の責任を中心として発達したものですから、いかに無過失責任を負わせるにしても、

>人類の予想していないような大きなものが生じたときには責任がないといっておかなくちゃ、

>つじつまが合わないじゃないか、そういう考えが出てくるだろうと私は解釈しております。

 

(注8) 下記の松本浩幸・大町達夫他(2000)[ 断層の破壊形態が津波の発生・伝播に及ぼす影響 ](土木学会HPにて公開)参照。

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2000/55-2/55-2-0013.pdf

 

(注9) 下記の読売新聞HPニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110330-OYT1T00133.htm

>福島第一原発を襲った今回の津波について、東京電力は「想定外」(清水正孝社長)としているが、

>研究者は2009年、同原発の想定津波の高さについて貞観津波の高さを反映して見直すよう迫っていた。

>しかし、東電と原子力安全・保安院は見直しを先送りした。

>・・・・・(中略)・・・・・

>貞観津波クラスが、450〜800年間隔で起きていた可能性がある。

>産総研活断層・地震研究センターの岡村行信センター長は同原発の想定津波の見直しを迫ったが、聞き入れられなかったという。

 

(注10) 中性子を吸収するホウ酸注入すると核分裂連鎖反応を抑えれますが、その後、(あのように原子炉が壊れなければ)原子炉を再使用するには中性子を吸収するホウ酸を原子炉から完全に除去しないと発電効率が落ちるので、原子炉へ早期のホウ酸注入をしなかったものと推定されます。

 

(注11) 私のホームページ記事[原子力発電を支持する電力中央研究所論文のウソ]参照。尚、私は当該記事の存在を電力中央研究所に通告し、地球惑星科学2006年連合大会で指摘の発表をしており、東京電力は知っていた可能性が高く、仮に知らなかったと仮定しても知らなかった事は業務上の過失と認定されるべきです。

 

(注12) 下記の読売新聞HPニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110316-OYT1T00550.htm

>天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきた。

 

(注13) 下記の4月8日NHKニュース記事参照。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110408/t10015172911000.html

>NHKが入手した資料には、地震当日の先月11日に福島第一原発の1号機から3号機で測定された原子炉の「水の高さ」や

>「圧力」などの値が示されていますが、東京電力などは、これまで地震の翌日以降の値しか公表してきませんでした。

>資料によりますと、1号機では、地震発生から7時間近くたった午後9時半に、原子炉の中で核燃料が露出するまでの水の高さが

>残り45センチとなり、通常の10分の1程度に減っていたことが分かりました。

>1号機から3号機では、地震と津波によってすべての電源が失われ、2号機と3号機では非常用の装置で原子炉を冷やし、

>水の高さが4メートル前後に維持されていました。

>これに対し1号機では、地震当日の夜までに、すでに安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことになります。

>また核燃料が水から露出するまで、2号機と3号機では、地震から1日半から3日程度かかっているのに対し、

>1号機では18時間ほどしかありませんでした。

 

(注14) 下記の読売新聞ニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110317-OYT1T00148.htm

>14日夜、東電の清水正孝社長と枝野官房長官、海江田氏が電話で連絡を取り合った。

>政府側は「燃料棒露出を受け、東電側が作業員全員の撤退を申し出てきた」としている。

 

(注15) 下記の朝日新聞HPニュース記事参照。

http://www.asahi.com/politics/update/0316/TKY201103160463.html

>首相「僕はすごく原子力に強い」 内閣特別顧問に語る

 

(注16) 下記の読売新聞ニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110315-OYT1T00273.htm

>首相は、「(原発対応は)あなたたちしかいないでしょう。(原発からの)撤退などあり得ない。覚悟を決めてください。

>撤退したときは東電は100%潰れる」とまくし立てた。首相の叱責する声は、会議室の外まで響き渡った。

 

(注17) 下記の読売新聞ニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110323-OYT1T00078.htm

>東京電力福島第一原子力発電所の事故に絡み、経済産業省原子力安全・保安院の検査官が事故発生後に約1週間、同原発を離れていたことが分かった。

>西山英彦審議官は22日の記者会見で、一時撤退した理由について「安全性に問題があり、人間が暮らすには不便が多かった」と述べた。

>検査官は各地の原発に赴いて、原発の運営を監督している。保安院によると、今回の事故では検査官7人が同原発で業務に当たっていたが、

>15日に現地本部が福島県庁に移った際、ともに県庁へ移動。22日に、検査官2人が同原発内の施設に戻った。

 

(注18) 下記の環境エネルギー政策研究所HPにある田中信一郎博士(環境エネルギー政策研究所 客員研究員)の論考参照。

[「未曾有の津波」は東京電力を免責するのか―土木学会指針と電力業界の関係― ]

http://www.isep.or.jp/images/press/report_0322.pdf

 

(注19-1) 「原子力発電所の津波評価技術」(2002)作成時の土木学会原子力土木委員会構成については、下記の土木学会HPの資料参照

[ 「原子力発電所の津波評価技術」(2002)・巻頭言他 ]

http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/system/files/TA-MENU-J-00.pdf

 

(注19-2) 下記の土木学会HPの資料参照

[ 「原子力発電所の津波評価技術」・本編 ]

http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/system/files/TA-MENU-J-01.pdf

 

(注19-3) 下記の土木学会HPの資料参照

[ 「原子力発電所の津波評価技術」・附属編-1(資料編)  ]

http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/system/files/TA-MENU-J-02.pdf

 

(注19-4) 下記の土木学会HPの資料参照

[ 「原子力発電所の津波評価技術」・附属編-2(レビュー編) ]

http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/system/files/TA-MENU-J-03.pdf

 

(注20) 下記のwikipedia「東京電力原発トラブル隠し事件」参照。

http://ja.wikipedia.org/wiki/東京電力原発トラブル隠し事件

 

(注21) 下記の東京電力ホームページ記事参照。

http://www.tepco.co.jp/cc/press/07011001-j.html

>当社渋沢ダム報告データの改ざんに関する調査報告書の提出について

 

(注22) 下記の読売新聞ニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110314-OYT1T00398.htm

> 経済産業省原子力安全・保安院は14日午後0時すぎに記者会見し、東京電力福島第一原発3号機の爆発に関し、

>「(3号機)1階の建屋近くのモニタリングでは、1時間当たり20マイクロシーベルトで、

>年間浴びて全く問題のない数値の50分の1程度の小さなものだった」と述べ

 

(注23) 下記の東京電力HP資料によれば、福島第一原発と外部との境界付近にある正門で同日午後9時37分に毎時3130マイクロシーベルト、翌日の3月15日午前9時に毎時11930マイクロシーベルトという高い空間放射線量が測定されています。

http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110315d.pdf

 

(注24) 下記の朝日新聞HPのニュース記事参照。

http://www.asahi.com/national/update/0611/TKY201106110146.html

 

(注25-1) 下記の産経新聞HPニュース記事参照。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110611/erp11061120230007-n1.htm

>「東電の不作為は犯罪的」IAEA元事務次長

 

(注25-2) 下記の産経新聞HPニュース記事参照。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110611/erp11061120200006-n1.htm

>IAEA元事務次長「防止策、東電20年間放置 人災だ」

 

(注26-1) 「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)・p.22参照。

http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si002.pdf

>長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の

>修復が期待できるので考慮する必要はない。

 

(注26-2) 下記の時事ドットコムHPのニュース記事参照。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201105/2011051900945

>福島第1原発事故で、原子力安全委員会の班目春樹委員長は19日、臨時会議の後の記者会見で、

>長時間の電源喪失を想定していなかった原発の安全設計審査指針について、「(これまでの指針は)明らかな間違いだった。

>しっかり直した上で、多重防護の指針を要求したい」と改訂を明言した。

 

(注27) すでに、みんなの党の渡辺喜美代表が2011年3月24日に東京電力国有化を提案されてるようです。

下記のSankeiBiz(サンケイビズ)HPニュース記事参照。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110324/mca1103241439010-n1.htm

>みんな・渡辺代表「東電の一時国有化を」巨額補償が必要で

 

(注28) 下記の読売新聞HPニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110614-OYT1T00209.htm

>原発賠償機構を閣議決定、東電の資金繰り支援