「火星12」ミサイルは二段式として試射されたと考えられる
「火星12」ミサイルを一段式ミサイルだと推定する分析が多いですが、「火星12」ミサイルの2017年5月14日の第一回発射実験及び2017年8月29日の第二回発射実験では二段式として発射されたと私は考えます。
二段式として発射実験されたと私が推定する根拠:
(1) 2017年8月29日の第二回発射実験に関する朝鮮中央テレビの公開動画 (注1) から発射43秒後に第二段目が切り離されたと推定 (注2-1) (注2-2) されていますが、その2秒後 (発射45秒後) にも二段目のロケット噴射と思われる弱い輝点が確認できます。また、その発射実験でも2700km飛行 (注3) しており、もし仮に発射43秒の切り離し以降に第二段目のロケット噴射がなければ、2700km飛行は無理でしょう。
(2) 「火星12」型ミサイルの再突入体の側面にデータ通信用のアンテナが付けられている事も二段式である理由です。もし仮に、再突入体の後部にロケット・エンジンが無ければ、空気抵抗や再突入時の高温対策のためデータ通信用のアンテナは再突入体の後部 (底部) に取り付けられるはずだからです。
(3) 北朝鮮発表のニュースでも「火星12」型ミサイルの再突入体の内部の模式図後部にロケット・エンジンと思われる構造物が黄色で描かれている事も二段式として発射実験されたと考える理由です。
(4) ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル研究グループの「38north」の専門家らは、外見上「火星12」型ミサイルは、多段式ミサイルの最終段の形状を備えており、再突入体部分はロケット・エンジンを有する多段式ミサイルの最終段の形状を備えている事を指摘されています。
以上の理由から私は、2017年5月14日及び2017年8月29日に北朝鮮が発射実験をした「火星12」型ミサイルは二段式として発射されたと考えています。ただし、北朝鮮発表のニュースの「火星12」型ミサイルの再突入体の内部の模式図に描かれている多面体の爆縮型核弾頭は開発計画に過ぎず2017年段階では未完成である可能性が高いと私は推測しています。おそらく2017年段階で北朝鮮が保有しているミサイル搭載可能な核弾頭は北朝鮮が標準核弾頭として2016年に映像公開した構造の簡単なガンバレル起爆式のウラン原爆弾頭 (推定重量約2トン) のみと私は考えています ( 詳細は別記事・[ 2017年5月時点で予想される北朝鮮の核弾頭の威力 ] 参照 ) 。「火星12」の先端部の形状が北朝鮮が2016年に映像公開した標準核弾頭にピッタリなので、それに合わせて設計された可能性が高いからです。そして、2016年に映像公開した標準核弾頭搭載の場合には先端部のスペースから一段式ミサイルとしてしか運用できないと考えられ、二段式として発射実験を行なったのは射程を長く見せかけるためのハッタリだと思われます ( 詳細は別記事・[ 北朝鮮「火星12」型ミサイル実験でペイロードが100kg未満ならハッタリ ] 参照 )。
2017年11月16日
御意見・御批判は対応ブログ記事・[ 火星12は二段式として試射されたと考えられる 浅見真規の雑記ブログ ] でコメントしてください。注釈:
(注1) 下記urlでの朝鮮中央テレビによる「火星12」発射映像 (「時事通信映像センター」によるyoube投稿動画) 参照。
https://www.youtube.com/watch?v=kSrPKBY9w0A&feature=youtu.be&t=50
(注2-1) 下記urlのTBSテレビ 【ひるおび!】記事参照。(ただし、現在、記事は削除されています。)
>発射43秒後の閃光。
>発射から43秒で大気圏を脱出してミサイルの切り離しを行った際の閃光と考えられるのではないか。
(注2-2) 下記url記事参照。
https://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/mbs/631597/631597/
>ひるおび!
>・・・(中略)・・・
>放送日 2017年8月31日(木) 11:55~13:55
>放送局 毎日放送
>・・・(中略)・・・
> ひるトク! (ニュース)12:41~
>・・・(中略)・・・
>発射43秒後の閃光について大気圏を脱出してミサイルを切り離したときの閃光だという。
>計算すると秒速3キロ×43秒で129キロの場所で切り離された。
(注3) wikipedia「火星12」の「2回目の発射」部分の記述参照。
https://ja.wikipedia.org/wiki/火星12