notice : This HP is written in Japanese. So Japanese code is needed.
急激な減速が試料採取ホーンの変形を引き起こし「着陸」と誤認した可能性について
(注意) 小惑星「イトカワ」の地表付近の重力加速度は地球の約10万分の1程度と推定されている。wikipedia「糸川 (小惑星)」参照。
世界時・2005年11月25日の小惑星探査機「はやぶさ」の小惑星「イトカワ」への第二回着陸試行について、宇宙航空研究開発機構は試料採取ホーン(サンプラーホーン)の変形の検知のみから世界時・2005年11月25日「はやぶさ」が「イトカワ」に着陸したと結論づけている。
しかし、宇宙科学研究本部(注1)のHPの2005年11月29日付けニュース記事(注2)の図2aを見れば22時0分頃から上昇して22時7分に着陸した事になり矛盾がある。それについて、宇宙航空研究開発機構は矛盾回避のための説明をしていない。
宇宙科学研究本部HP・2005年11月29日付けニュース記事より図2aを引用
さらに、「惑星科学」分野の研究調査の一環として岩石・砂礫(レゴリス)採取(注3)するなら岩石採取現場の写真は必要不可欠にもかかわらずそれがなく、結果として着陸の証拠写真もない。高度計の代用となる距離計のグラフも宇宙航空研究開発機構が着陸を主張する世界時・22時7分頃のものは存在しない(注4)。 着陸の証拠写真もなく、距離計データも当該時刻のものはない。単に試料採取ホーン(サンプラーホーン)の変形検知のみで着陸と判断しているのである。
しかし、たとえば、「はやぶさ」本体が22時4分頃に急減速したために微弱な力でしなやかに変形する試料採取ホーンが変形し、それを宇宙航空研究開発機構が「着陸」を示すものと誤認したと考えた方がデータの整合性が良いのである。その事を以下に示す。
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試料採取ホーン(サンプラーホーン)の設計に関与した東北大学・吉田研究室HPの動画の中にはサンプラーホーンがしなやかにしなっているシミュレーション動画がある。また、東北大学・吉田研究室HPのホバリング動画を見ればおよそ地上5m程度の高さからの自由落下の運動エネルギーがサンプラーホーンの変形につながっているのがわかる。
ここで、「イトカワ」の地上約7mから重力によって「はやぶさ」の自由落下で得られる運動エネルギーを計算すると、 「イトカワ」のターゲットマーカー落下地点付近の重力加速度を約 0.00008m/s^2 とし、「はやぶさ」の質量を約500kgとすれば、位置エネルギーは約500*0.00008*7=0.28[J]となる。それは地上で1kgの物体を3cmの高さから落とした場合の運動エネルギー程度でしかない。その程度のわずかな運動エネルギーでしなやかに変形するのである。
さて、図2aから22時4分に、0.08m/s, 22時7分に0.04m/sとすれば、その間の減速によるサンプラーホーンの運動エネルギーの減少の大部分は試料採取ホーン(サンプラーホーン)の変形によって蓄えられるエネルギーに変化している。ここで、簡単のため、仮にサンプラーホーンの最下節(逆さ漏斗状の接地用部分を含む)の質量を約1kgと仮定(注5)して減速によるサンプラーホーンの運動エネルギーの減少が全部サンプラーホーンの変形によって蓄えられるエネルギーに変化しているとした場合の変形によって蓄えられたエネルギーを求めると、{( 0.08 )^2-( 0.04 )^2}/2=0.0024 [ ジュール ] である。これは、先に計算した「イトカワ」の地上約7mから重力によって「はやぶさ」の自由落下で得られる運動エネルギーの約0.86%である。ここで、仮に、サンプラーホーン全体が一個の弾性体とみなしてフックの法則が適用できると仮定すると、変形量の2乗が弾性エネルギーになるので、減速によるサンプラーホーンの変形量は「イトカワ」の地上約7mから重力によって「はやぶさ」の自由落下で得られる変形量の約9.3%になるのである。
ここで、注意すべきは、探査機「はやぶさ」がサンプラーホーンの最大変形になるよりもずっと早くサンプラーホーンの変形を検知している事である。東北大学・吉田研究室HPの着地シミュレーション動画を見ればわかるように、サンプラーホーンの最大変形時には上昇のための化学エンジン噴射をしているのがわかる。また、東北大学・吉田研究室HPのサンプル採取の瞬間のスローモーションのシミュレーション動画を見ればわかるように非常に短時間の接地の間に弾丸発射・試料採取しているので、探査機「はやぶさ」はサンプラーホーンの最大変形時より前に接地を認識せねばならない。つまり、サンプラーホーンがごくわずかに変形しただけで探査機「はやぶさ」は「着地」を認識するのである。よって、上記の計算で求めた自由落下で得られる変形量の約9.3%という数値は探査機「はやぶさ」が「着地」を誤認する可能性が高い事を示している。
用語解説
協定世界時(UTC): 厳密にはグリニッジ標準時(GMT)とは異なるが、実質的にはグリニッジ標準時(GMT)とほぼ同じである。日本時は協定世界時(UTC)より9時間進んでいる。
IT用語辞典 e-Words HP・UTC 【協定世界時】 参照
(注1) 宇宙科学研究本部は独立行政法人「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」の下部組織である。旧名は、「宇宙科学研究所(ISAS)」であった。詳細は宇宙航空研究開発機構HP参照。
(注2) 宇宙科学研究本部のHPの2005年11月29日付けニュース記事
[ 「はやぶさ」の第2回着陸飛行の結果と今後の計画について ]
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2005/1129.shtml
(注3) 岩石・砂礫(レゴリス)試料採取現場の写真がないと、採取した試料が小惑星「イトカワ」固有の 岩石・砂礫なのか、他の天体由来の隕石等なのか区別がつかない。これは、地球における地学の岩石・砂礫試料採取でも現場のスケッチもしくは写真が必要なのと同じである。探査機「はやぶさ」は無人機なのでスケッチは不可能だが写真撮影は可能だったはずだ。
岩石・砂礫試料採取の基本である試料採取現場写真(探査機「はやぶさ」は無人機なのでスケッチは不可能のため写真)があれば、着陸の証拠写真にもなったのである。
(注4) 宇宙科学研究本部のHPの2005年11月29日付けニュース記事の高度計の代用となる距離計に関する図3a・「第2回着陸時の近距離レーザ距離計の計測値履歴」には宇宙科学研究本部が着陸したと主張する時刻の22時7分頃のデータが存在しない。
(注5) 東北大学・吉田和哉教授に確認中であるが、2006年1月19日現在未回答である。尚、宇宙航空研究開発機構の宇宙科学研究本部にも問い合わせたが、その件については回答を拒否された。そのため、現時点では推測によらざるをえなかった。
2006年1月27日(当初版・2006年1月19日)
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