裁判所法第十条第三号違背の最高裁判決

 

2006年(平成18年)7月21日、最高裁判所・第二小法廷は商取引に関する民事事件について外国(政府)が日本の裁判権に服するとする制限免除主義の判決をした(注1) (注2)。しかし、これは大法廷でなすべき最高裁判所判例の変更の裁判を小法廷でしており裁判所法10条3号(注3)違背である。

なぜなら、平成9年(オ)第1912号・最高裁判所第三小法廷・平成10年1月27日判決を小法廷で変更したからである。平成9年(オ)第1912号・最高裁判所第三小法廷・平成10年1月27日判決は、外国国家に対する訴えは不適法であってその決缺を補正することができないとした原審の判断は、正当として是認することができる」として絶対免除主義によった判決である。

その上告審判決の原審判決は大阪高等裁判所・平成9年(ネ)第302号事件・平成9年9月4日判決であり、それは、私が英国の国営電力企業分割民営化で日本での株式売り出しのトラブルで共同売り出し人の野村證券と英国(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)を大阪地方裁判所に訴えた平成8年(ワ)第12331号事件で、「外国国家は日本の裁判権に服さないのが原則」として却下した大阪地方裁判所・平成9年1月29日判決の判決理由を引用している。

裁判所法第10条3号(注3)は、「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。」となっているので、国際慣習法の解釈適用については裁判所法第10条3号に明示されていないが、憲法98条2項から国際慣習法の解釈適用についても日本国内で国際慣習法が直接適用される場合の解釈適用においては「憲法その他の法令の解釈適用」に含まれると考えるべきものである。


参考資料:判決書正本の画像 (「主権免除」に無関係な部分は都合により黒色に塗りつぶしてある。)

大阪地方裁判所・平成8年(ワ)第12331号事件・平成9年1月29日判決・判決正本の一部分の画像

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大阪高等裁判所・平成9年(ネ)第302号事件・平成9年9月4日判決・判決正本の一部分の画像

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最高裁判所・平成9年(オ)第1912号事件・平成10年1月27日判決・判決正本の画像

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2006年7月31日 (当初・2006年7月25日版

浅見真規 masanori_asami@infoseek.jp  

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(注1) 最高裁判所HPにおける平成15(受)1231号・貸金請求事件解説参照。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=33348&hanreiKbn=01

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(注2) YahooニュースHP(産経新聞ニュース)参照。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060721-00000021-san-soci

>外国政府への支払い請求 「裁判免除されぬ」 

>最高裁判例78年ぶり変更

 

> 東京都内の企業2社がパキスタン政府を相手取り、

>コンピューターの売却代金など約18億円の支払いを求めた

>訴訟の上告審判決が21日、最高裁第2小法廷であった。

>今井功裁判長は「外国国家の私法的行為については、わが国

>による民事裁判権の行使が外国国家の主権を侵害するおそれが

>あるなど特段の事情がない限り、民事裁判権から免除されない」

>と述べ、外国政府には原則として日本の裁判権が及ばないとする

>「裁判免除」を認めた昭和3年の大審院判例を78年ぶりに

>変更した。

 

 

昭和3年の大審院判例とは、「松山哲雄 対 中華民国」事件(大審院・昭和3年12月28日決定)

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(注3) 電子政府の総合窓口HP参照

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO059.html

第十条 (大法廷及び小法廷の審判)  事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、

最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。

一  当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。

(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)

二  前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。

三  憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。

 

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