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原子力損害賠償法・第三条の天災免責規定が被害大幅増大させた疑い
「原子力損害の賠償に関する法律」(略称:原子力損害賠償法)・第三条第一項の「異常に巨大な天災地変」による免責規定が2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震後に起きた福島第一原発の事故の規模を拡大し被害を増大させた疑いがあります。
[ 原子力損害の賠償に関する法律・第三条第一項 ] 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。 |
ここで、2011年東北地方太平洋沖地震後に起きた福島第一原発の事故は「異常に巨大な天災地変」「によつて生じた」ものである事は確実です。
しかし、東北地方太平洋沖地震直後に防災を最優先にして東京電力が対策をすれば、放射性物質の放出・流出ははるかに少なくて済んだ疑いがあるのです。
つまり、問題は、東京電力が原子力損害賠償法・第三条の免責規定を奇貨として防災より会社の利益追求を優先させたために被害を大幅に増大させた疑いがある事です。法的には、原子力損害の賠償に関する法律・第三条第一項は不可抗力を明示していないので単に「異常に巨大な天災地変」が起きれば即免責されるのか、それとも「異常に巨大な天災地変」によってだけでなく重過失によって被害を拡大させ場合には不可抗力では無いので免責されないのかが問題となるでしょう。経済的には巨額の損害賠償を税金で負担するのか東京電力の株主が負担するのかの問題になります。東京電力が原子力損害賠償法・第三条の免責規定を奇貨として防災より会社の重要資産である原子炉の継続使用の可能性を優先(注1)させ、被害を大幅に拡大させたなら免責されないと解釈すべきです。
最大の問題は事実認定です。東北地方太平洋沖地震発生当日の2011年3月11日に各原子炉に中性子を吸収し核分裂連鎖反応を抑えるホウ酸を注入しなかった(注1)事が核分裂連鎖反応を招いたか否かです。
私は3号炉について3月13日・14日に核分裂連鎖反応が起きた事を別記事[3月14日爆発時放出キセノン133は前日の弁開放後の連鎖反応で生成]で示しました。それによって、3月14日に起きた3号機建屋爆発で大気中に放出された放射性物質によって引き起こされた被害については東京電力が損害賠償責任を負うべきでしょう。
しかし、重大な漁業被害を引き起こすであろう海水への放射能汚染水流出の最大の原因が2号機の損傷と現時点では推定される事から、2号炉で核分裂連鎖反応が起きて損傷を引き起こしたか否かの事実確認が重要になります。私は2号炉でも核分裂連鎖反応が起きた可能性があると考えていますので、私は政府に対し確実な証拠を得るために福島第一原発2号機タービン建屋地下でのキセノン133の放射能濃度測定を早急に実施する事を強く要求します。
尚、東京電力は事前に耐震対策が不十分である事を知りながら、東京電力が他の電力各社と共同で設立した電力中央研究所の研究員・井上大栄が不正な論文を発表(注2)した事により、東京電力が低い耐震性を正当化して耐震性が低いまま操業し、それによって重大な被害を発生させた疑いがあるのです。これについては、東京電力が電力中央研究所の研究員・井上大栄に直接に不正論文の発表を命じたとまでの立証の見込みが無いので電力中央研究所の研究員・井上大栄が不正な論文を発表した事については今回の損害賠償には直接は影響しないかもしれません。
2011年4月10日
(注1) 中性子を吸収するホウ酸注入すると核分裂連鎖反応を抑えれますが、その後の原子炉使用が困難になるそうです。
(注2) 下記の私のホームページ記事[原子力発電を支持する電力中央研究所論文のウソ]参照。