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 (仮に国際法で取得時効が容認されても)日中共同声明は時効を中断する

 

問題の所在と本件考察における仮定:

   多くの国では民法等の国内法において土地の「取得時効」が認められているが、領土について「取得時効」を認める事は国際法として確立していない。また、国際法廷は長期にわたって平穏かつ公然に競合相手国に優越する実効支配を継続した場合には「取得時効」を認める代わりに個別案件について事案を総合的に判断して処理し表面的には取得時効を認めていない。国際法上の争いでは一律の時効期間による取得時効を認定するより個別案件について総合的に判断をする方が優れている。逆に、国内での民法上の土地の所有権の争いでは顕在化した案件だけでも多く、しかも、もし仮に国内法で一律の時効期間による取得時効を認めない場合は更に問題が多く発生する危険があり個別案件で総合的に判断する事は不可能である。また、国内の民法では、一律の時効期間による取得時効を認めた方が予測可能性が高く不動産取引や担保設定等の経済活動を安定化させる事ができる。これが多くの国で国内法で土地の「取得時効」が認められるのに国際法廷が領土について「取得時効」を認めない理由であろう。

   しかし、平穏かつ公然な実効的占有が50年以上継続した場合に領土の取得時効成立を認める国も少数ながら存在し、相当数の国際法学者が取得時効を領土の権原として認めているので、将来、絶対に国際法廷が領土の取得時効を認めないという保証は無い。そこで、以下においては、もし仮に、国際法廷が領土について取得時効の可能性を容認すると仮定した場合の尖閣諸島領有問題を考察する。

 

   日本は1972年5月15日の沖縄の施政権返還によってアメリカから尖閣諸島の実効的占有を引き継いだ。実効的占有の引継ぎによって一時的に時効の起算点はサンフランシスコ講和条約 (注1) 発効の1952年4月28日となる。しかし、1972年9月29日の日中共同声明 (注2) で、日本はポツダム宣言第八項 (注3) に基づく立場の堅持を確認した。すなわち、日本は1972年9月29日に、過去に中国から武力を背景に割譲をさせた台湾・澎湖諸島等の中国への返還の確認と日本の領土が本州・北海道・九州・四国及び連合国が認めた諸小島に限定される事を確認したのである。よって、1972年9月29日の日中共同声明で尖閣諸島に関する時効は中断されたのである。


目次

2019年2月28日

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浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


(注1) 外務省のホームページにおいて下記urlで「サンフランシスコ講和条約 (日本国との平和条約)」の文面が公開されている。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-S38-P2-795_1.pdf

 

(注2) 外務省のホームページにおいて下記urlで「日中共同声明」の文面が公開されている。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html

三      中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。

>日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

 

(注3) 国会図書館のホームページにおいて下記urlで「ポツダム宣言」の文面が公開されている。

http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html

>八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

 

尚、カイロ宣言の文面は、国会図書館のホームページにおいて下記urlで公開されている。

http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/01/002_46/002_46tx.html