(注意)これは、閲覧用ではありません。これは、過去記事保存資料用です。最新版を御覧ください。


 地震学会は

原発推進の我田引水PR論文を批判しないのか?

 

地球科学関連学会(特に地震学会)は追及したのでしょうか?

  島根原子力発電所について原発反対派から島根原発周辺に大地震の震源となりうる危険な活断層の有無について問題が提起され、島根原発設置者の中国電力株式会社はそのような危険な活断層は島根原発周辺に存在しないとしていました。しかし、2000年10月6日に鳥取県西部地震が起きました。その地震震源域は今まで活断層の存在が知られてなかった地域で、危険な活断層は発見可能とする中国電力の主張にも疑問が生じました。  ところが、地球惑星科学関連学会・2001年合同大会において井上大栄氏らは2000 年鳥取県西部地震の位置と規模は事前に評価可能とする2つの予稿が電力 10 社による電力共通研究の成果の一部として発表されました。(注1) (注2)また、その後、電力中央研究所の2001年版研究年報にも井上大栄氏は上記2論文をさらに進めて詳細な調査をすれば原子力発電所の選定や耐震設計に必要な地震規模予測が可能と発表されました。(注3) それらについて単に井上氏が結果論で予見可能と主張した事や電力中央研究所という電力会社9社の設立した財団法人に属しているので中立性に疑問があるというだけでなく実質的な疑義がある事は別項目「(原発推進)電力中央研究所論文のウソと疑問点」にまとめましたので詳しくはそちらを御覧ください。

  問題は、将来それらの論文が電力会社によって原子力発電所の安全性の根拠として利用される可能性があるという事です。発表者の井上大栄氏らが電力 10 社による電力共通研究の成果の一部として発表している以上は中立性に疑問があるのは明白です。また、2000年鳥取県西部地震の結果を知ってから結果論で予測可能だと主張し、従来の通説による出雲地震の震源地とも異なるのです。それらの事情を考慮すれば、将来の原発事故という大規模人災の防止の観点から厳しく立証を要求すべきです。重大な被害の起きる危険のある意図的な虚偽学説の取り締まりは学会の社会的責任だからです。尚、学会を利用して意図的に危険な虚偽の理論のPRをしている疑いが濃厚な場合に放置するのは学問の自由ではありません。なぜなら学問の自由の保障はエセ学説の自由の保障ではないからです。

  まず、地球惑星科学関連学会(特に地震学会)は、第一に電力中央研究所・2001年版研究年報における井上大栄報告の

「2000 年鳥取県西部地震における地震断層の活動履歴調査」

http://criepi.denken.or.jp/jpn/PR/Nenpo/2001J/01seika53.pdf

におけるウソの追及は最低限すべきです。井上大栄氏は西暦880年の出雲地震と2000年鳥取県西部地震の被害状況が似ているとされますが、これはウソだからです。西暦880年の出雲地震では出雲国府で大きな被害が出ましたが、2000年鳥取県西部地震では出雲国府のあった付近の被害は軽微でした。詳しく言いますと、出雲国跡は東出雲町に隣接する松江市南東部の松江市大草町にありますが、2000年鳥取県西部地震では、松江市の家屋で全壊なし・半壊1棟、東出雲町全壊なし・半壊なしという結果でした。

http://ss7.inet-osaka.or.jp/~asami/gadenn_innsui/jitsuroku.html (日本三代実録・巻三十八・元慶四年十月二十七日)

http://www.pref.shimane.jp/section/shoubou_bousai/hodo-m/C2001040901/C2001040901.htm (島根県HP・被害報告)

http://www.pref.tottori.jp/bosai/seibujisinhigai.htm (鳥取県HP・被害報告)

  また、立証責任についてですが、たとえば、C14分析の対象とした砂礫層が問題の断層の最終活動時にすでに存在していたのか十分な立証を要求すべきです。最終活動時に存在してなければC14分析は無意味だからです。また、C14分析で年代の新しい試料を年代の古い試料より下の地層で発見したとしてるのですから、その上下逆転の理由の十分な説明もしくは地層堆積後に有機成分の流入がなかった事の証明も要求されるべきでしょう。

   また、それらの論文はいずれも英語版まであり、電力会社によって島根原発のみならず世界中の地震国の原子力発電所の安全性の根拠として利用される可能性がある事から、疑義に対する納得のいく回答あるまで地球惑星科学関連学会HPでの予稿の公開に当たり「疑義が解明されていない」旨の注記を入れるべきでしょう。また、地震学会は疑義が解明されなければ公式に電力中央研究所に遺憾の意を表明すべきです。

付記:2001年合同大会時点では電中研・井上氏も原発の安全性に言及しておらず、将来、電力中央研究所・研究年報で言及する事まではわからなかったので、その時点では地震学会にも同情の余地はありますが、現時点で追及しないのは問題でしょう。

 

2004年3月4日

浅見真規 asami@mbox2.inet-osaka.or.jp

(討論用掲示板) 「大根島」 (御意見をどうぞ)

(談話室)「オクトパスアイランド」 (お気軽にどうぞ)

目次

(注1) 井上大榮・上田圭一・宮腰勝義・宮脇明子、(2001年地球惑星科学合同大会)

2000 年鳥取県西部地震の位置と規模は事前に評価可能か?(その 1)-震源域周辺の断層変位地形-

Landforms associated with strike-slip faulting in the epicentral area of the 2000 Western Tottori earthquake

http://www-jm.eps.s.u-tokyo.ac.jp/2001cd-rom/pdf/s3/s3-p014.pdf

戻る

(注2) 井上大榮・上田圭一・宮腰勝義 ほか、 (2001年地球惑星科学合同大会)

2000 年鳥取県西部地震の位置と規模は事前に評価可能か?(その 2)-震源域周辺の断層破砕帯と活断層露頭-

Fault exposures dislocating late Quaternary deposits in the epicentral area of the 2000 Western Tottori earthquake

http://www-jm.eps.s.u-tokyo.ac.jp/2001cd-rom/pdf/s3/s3-p015.pdf

戻る

(注3)  井上大栄、(電力中央研究所・2001年版研究年報)

2000 年鳥取県西部地震における地震断層の活動履歴調査

http://criepi.denken.or.jp/jpn/PR/Nenpo/2001J/01seika53.pdf

戻る