尖閣諸島領有問題で中国が主張すべきでない事
尖閣諸島領有問題において、中国は無理な主張をしなければ国際法廷で圧勝できる事を私は示した。しかし、欧米人やアフリカ人や南アジア人等の非漢字文化圏の裁判官にとって膨大な分量の漢文資料や日本語資料はウンザリするものであり、中国側の主張や提出証拠に一つでも偽造証拠や無理な解釈があれば、日本政府は「待ってました」と揚げ足を取り、他の正当な証拠まで裁判官に怪しいと思われて中国は信頼を失うだろう。また、疑義のある主張や証拠によらずとも尖閣諸島は完全に中国領だと立証できる。
よって、もし仮に国際法廷に委ねる場合には中国政府は以下の主張や証拠の提出は避けるべきである。
(1) 西太后が釣魚台・黄尾嶼・赤尾嶼を盛宣懐に与えるとの詔書
(2) オックスフォード図書館蔵書『順風相送』を明朝初期の書物として主張する事 (ただし、16世紀半ば以降1639年以前に発行された尖閣諸島航路が記載された水路誌を英国の大学に寄贈した事による国際公示の証拠としての主張はすべきである。)
(3) 尖閣諸島が行政区画としての台湾省に属したと主張する事 (ただし、地理的に台湾に属するとの主張はすべきである。)
(4) 島の位置がデタラメな『籌海図編』を日本より先に証拠として提出する事 (ただし、日本が提出すれば海賊対策をして実効支配した証拠だとの主張はすべき)
(5) 『台海使槎録』 の「祟爻之薛坡蘭」を尖閣諸島の南小島や北小島と主張する事
(6) 伊澤眞伎氏(伊澤弥喜太氏の長女)の証言文書 (虚偽でないとしても伊澤弥喜太氏からの伝聞証拠にすぎず、他の証拠で同様の立証可能)
(7) 隋書・琉求国伝 (隋書・琉求国伝の琉求国は台湾の可能性が高く、「高華嶼」も比定不能)
(8) 林子平による『三国通覧図説』付図「琉球三省并三十六島之図」を論拠とする事 (「琉球三省并三十六島之図」に示されている首里城の緯度がデタラメ)
付記:
漢文文献の解釈で強引な解釈をすると、非漢字文化圏の者に漢文文献の解釈の信用性について疑義を抱かせる事になる。漢文文献の解釈は控えめにし、国際法や国際慣習でエレガントに決着をつけるべきである。
2019年2月27日 (2018年5月16日・当初版は こちら 。)
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