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 表現の自由を無視しグーグルマップから中国名削除を要求した日本政府

 

    通常、国際裁判では紛争発生後の事実はほとんど考慮されない (注1) 。しかし、紛争発生後の事実であっても、それが紛争発生前から連綿と受け継がれたであろう東アジアの漢字文化圏諸国の慣習を示す根拠となりうる紛争当事国政府当局者の基本的習性・感性を示す重要な証拠となりうる事実の場合は考慮されるべきで、「クリティカル・デート」(「決定的期日」)の趣旨にも反しない。

   2010年に日本政府が日本国憲法・第21条の「表現の自由」を無視してグーグルマップの尖閣諸島の島名表記から中国名の削除をグーグル社に求めた事実 (注2) は、19世紀半ばまで国旗を持たない漢字文化圏の日中韓三国の政府当局者の無主地先占と島名表記に関する基本的習性を示し、それは、他の漢字文化圏諸国の命名を受け入れる事が暗黙に他の漢字文化圏諸国の先占を認める事実上の慣習があった証拠である。19世紀半ばまで国旗を持たなかったため、漢字による命名は西洋諸国が無人島に国旗を立てて先占を宣言する行為に匹敵したからである。

   2010年当時に日本のの外相であった前原誠司氏は法学部を卒業しており、日本国憲法・第21条の「表現の自由」は知っていたはずにもかかわらず、憲法の「表現の自由」を無視してグーグルマップの尖閣諸島の島名表記から中国名の削除をグーグル社に求めた事は法治国家として重大な違反行為であり、ヒステリックな対応である。あたかも、犬がライバルの犬の臭いを嗅ぎ付けて、ワンワン吠えて自分の小便をかけて自分の臭い付けをするような本能的対応のようですらあった。

   しかし、前原誠司氏だけが特殊な日本人だったわけではない。当時は野党だった自民党の国会議員も同様の対応をし、小野寺五典外交部会長もグーグル社に訂正要請していた (注2) からである。

   また、日本政府当局者も犬ではないので、台湾のように「無主地先占」でなく「割譲」の場合は、台湾を領有した1895年から1945年までも中国名を受け入れていた。それゆえ、この事は、日本海軍作成の水路誌が日清戦争前には英国水路誌の英語名のカタカナ表記だったのを日清戦争後の尖閣諸島に関する最初の水路誌である『日本水路誌 第2卷 附録 (明治29年刊行) 』で「釣魚嶼」・「黄尾嶼」・「赤尾嶼」という伝統的中国名に変更したという事は、日本海軍・水路部が尖閣諸島が日本領になった原因について無主地先占ではなく割譲だったとの認識を示した事が判る (別記事・[ 日清戦争後の水路誌で中国名に変更した日本海軍 ]参照)。


目次

2018年3月28日

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浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


(注1) 筒井若水 編・有斐閣・『国際法辞典』の「クリティカル・デート」(「決定的期日」)項目参照。 ただし、尖閣諸島領有問題では複数の「クリティカル・デート」(「決定的期日」)の設定もありうる。

 

(注2) J-CASTニュース記事・[ グーグルは尖閣の中国名併記 自民、訂正申し入れ ]参照。

https://www.j-cast.com/2010/10/14078220.html