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北朝鮮の弾道ミサイルを十分にレーダー捕捉できていたのか?

 

   私は日本のレーダーが北朝鮮が今年になって発射実験した「火星12」・「火星14」ミサイルを十分に捕捉できていたのか疑念を抱いている。疑念を抱く理由は三つある。

   まず、疑念を抱く理由の第一は、防衛省が発表した最高高度があまりにも大雑把すぎるからである。

 

最高高度についての防衛省の発表の表現

最高高度についての北朝鮮の発表の表現

火星12 の第一回目発射実験

2,000kmを超えた高度 (注1) 高度2111km (注2)

火星14 の第一回目発射実験

2,500kmを大きく超える高度 (注3) 高度2,802km (注4)

火星14 の第二回目発射実験

3,500kmを大きく超える高度 (注5) 高度3724.9km (注4)

   防衛省による発表の表現が大雑把すぎる事から、最高高度に関して防衛省が把握した数値は誤差100km以上あった疑いがある。もし、この私の危惧が当たっているなら、最高高度付近でレーダーで捕捉できなかったのみならず、一旦見失った後は、ほとんど大気が無く空気抵抗の影響がわずかな高度100km以上で再捕捉できていなかった事になる。高度100km以上で再捕捉できていれば弾道計算で誤差10km以内で最高高度を逆算できたはずだからである。すなわち、自衛隊のレーダーが三次元的に再捕捉できたのは高度100km未満の疑いがあるのだ。

   もし万が一、上記の私の危惧が当たっていて高度100km未満でしか再捕捉できなかったとすれば、迎撃可能最低高度が70kmのイージス・アショアのSM-3ミサイルでは迎撃困難であろう。迎撃可能最低高度が40kmのTHAADミサイルですら迎撃困難になるかもしれない。その場合、弾道ミサイル迎撃で機能するのはパトリオット・pac3ミサイルのみになってしまう懸念がある。

   尚、上記の私の危惧が当たっていたなら、火星14 の第二回目発射実験での北朝鮮ミサイルが奥尻島の北西約150km付近に落下 (もしくは燃え尽き消滅) した事と奥尻島に自衛隊の三次元レーダーが存在した事と考え合わせると180km未満の距離でしか再捕捉できなかったという事を意味する。仮に奥尻島に自衛隊の三次元レーダーの探知距離がイージス艦と同程度で低仰角で約450kmとして上方に弱くて400km程度だとしても再捕捉が180km未満である原因をレーダーのシロウトの私なりに憶測すると、北朝鮮が電波吸収塗料 (ステルス塗料) を再突入体に塗布していた可能性と、自衛隊が確実に再捕捉するために三次元レーダーを低仰角で二次元運用していたか、または三次元運用で探査範囲が多くて再捕捉に手間取ったかであろう。

   疑念を抱く理由の第二は、北朝鮮軍がステルス塗料の塗布を励行しているからである (注6) 。ちなみに、電波反射を十分の一近くまでに低減できる電波吸収塗料 (ステルス塗料) が市販されており、市販の電波吸収塗料 (ステルス塗料) を入手して塗布し反射電波強度を8分の1程度にしたという比較的楽観的な仮定では、レーダー反射波強度が距離の4乗に反比例するので探知距離は約6割に減少する。また、北朝鮮軍はステルス化のため電波吸収塗料 (ステルス塗料) の塗布を図っているので、「火星12」・「火星14」ミサイルの再突入体にも電波吸収塗料 (ステルス塗料) が塗布されている可能性は大いにあると思われる。

   疑念を抱く理由の第三は、「火星12」の第三回発射実験の推定落下地点について首相官邸発表が襟裳岬の東、約2000kmから約2200kmに約200kmも修正されたからである (注7-1) (注7-2) 。これは三次元レーダーとして探知できていなかった事を意味していると思われる。


目次

2017年9月29日 (2017年8月19日・当初版は こちら 。)

御意見・御批判は対応ブログ記事・[ 北朝鮮の弾道ミサイルを十分にレーダー捕捉できていたのか?   浅見真規の雑記ブログ ] でコメントしてください。

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


(注1) 下記の防衛省ホームページ記事参照。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2017/05/14b.html

 

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(注2) wikipedia「火星12」参照。

https://ja.wikipedia.org/wiki/火星12

 

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(注3) 下記の防衛省ホームページ記事参照。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2017/07/04b.html

 

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(注4)wikipedia「火星14」参照。

https://ja.wikipedia.org/wiki/火星14

 

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(注5)下記の防衛省ホームページ記事参照。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2017/07/29b.html

 

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(注6) 下記のDailyNK Japan(デイリーNKジャパン)記事参照。

http://dailynk.jp/archives/10290

 

(注7-1) 下記urlの首相官邸ホームページ・平成29年9月15日(金)午前発表記事『北朝鮮による弾道ミサイル発射事案について(1)』参照。

http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201709/15_a.html

>襟裳岬の東、約2,000キロメートルの太平洋上に落下したものと推定されます。

 

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(注7-2) 下記urlの首相官邸ホームページ・平成29年9月15日(金)午前発表記事『北朝鮮による弾道ミサイル発射事案について(2)』参照。

http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201709/15_a2.html

>襟裳岬の東、先ほど約2000キロメートルと言いましたけども、現時点では2200キロメートルの太平洋上に落下したものと推定されます。

 

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