国連改革が中華民国(台湾)の国連復帰につながる可能性
1971年の国連総会で、第2758号決議(アルバニア案決議)により、中国の正統政府が「中華人民共和国政府」と認定され、台北政府の代表者の国連追放が決議されました。しかし、1971年の国連総会・第2758号決議(アルバニア案決議)で追放されたのは蒋介石の代理人であって中華民国の追放とはしていません。
http://www.un.org/documents/ga/res/26/ares26.htm ( 国連HP )
http://ods-dds-ny.un.org/doc/RESOLUTION/GEN/NR0/327/74/IMG/NR032774.pdf?OpenElement
>and to expel forthwith the representatives of Chiang Kai-shek
>from the place which they unlawfully occupy at the United
>Nations and in all the organizations related to it.
しかも、今でも国連憲章・第23条の文章では「中華民国」が国連安全保障理事会の常任理事国となったままです。
http://www.unic.or.jp/know/kensyo.htm (国連広報センターHP)
>第23条
> 1. 安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。
>中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、
>グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及び
>アメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。
もちろん、これはアルバニア案決議によって「中華民国」を「中華人民共和国」と読み替えられてはいます。しかし、そのため、国連では「中華民国」という名称の国家は存在しない事になっているのです。国連が台湾の「中華民国」を国家として扱っていないから加盟国の追放に必要な除名手続き(国連憲章・第6条)無しに台北政府の代表者は国連から追放されたのです。国連憲章・第23条の「中華民国」を安全保障理事会の常任理事国とする規定を放置している以上、「中華民国」という名称の国家が存在しては困るのです。(これは、アルバニア案が国連においては、中国について「中華人民共和国政府」が「中華民国政府」を完全承継と同等に扱っているという事です。)実際、1971年当時の台北政府は国家の政府とは考えにくい状況でした。蒋介石政権下の台北政府は台湾住民を武力で弾圧したもので台湾住民を代表する政府でなく、民衆と敵対すれば共産主義化されるのは時間の問題とも思われ、また当時アメリカすらもベトナム戦争で敗色が濃厚でした。さらに、蒋介石政権下の台北政府は中国全土を領土と主張し(今でもその領土規定はそのままと推定されますが)大陸反攻を目指しており、それは中国本土を追われた「負け犬の遠吠え」との印象が濃厚でした。(つまり、1971年当時、国連においては、中国について「中華人民共和国政府」が「中華民国政府」を完全承継したのと同様に扱われても仕方のない状況でした。しかし、現実には台湾・金門・澎湖・馬祖については台北政府が実効支配を続けており、台湾・金門・澎湖・馬祖の領有については未だに政府承継されておらず不完全承継です。)
ところが、現在では台湾は民主化され台北政府は台湾民衆を民主的に代表する政府に変身しています。それゆえ、将来の国連改革で国連憲章・第23条が改正され「中華民国」の文言が「中華人民共和国」となれば、読み替えの必要がなくなり、中国を分裂国家と考えて(言い換えると中国本土の「中華人民共和国」と台湾・澎湖・金門・馬祖の「中華民国」を別個の国家と考えて)、
「中華人民共和国」=「本土中国」
「中華民国」=「(中国の一部としての)台湾・澎湖・金門・馬祖」
と解釈する余地が生じます。
ここで注意すべきは国連総会・第2758号決議(アルバニア案決議)によって国連から追放されたのは台湾住民を虐殺し台湾を民主的に代表しない蒋介石の代理人だった事です。「中華民国」の追放は決議されていないのです。もちろん、安全保障理事会・常任理事国の地位は本土中国である事が暗黙の前提ですので国連憲章・第23条で「中華民国」が国連安全保障理事会の常任理事国とされている間は国連復帰できません。しかし、将来の国連改革で国連憲章・第23条が改正され「中華民国」の文言が「中華人民共和国」となれば、(中国の一部としての)台湾を領土とする「中華民国」として国連復帰できる余地が生じます。つまり、国連憲章改正後に約20年程度の期間を置いて中国の一部である台湾としての「中華民国」という独立国家という国際的認識が得られれば、原加盟国である中国が分裂してできた国家の一つなので原加盟国として国連復帰が可能であり中華人民共和国も(新規加盟でないので)拒否権行使できなくなります。(ただし、中華人民共和国が拒否権行使しないと事前に宣言するか国連改革で新規加盟勧告について拒否権規定が廃止されれば新規加盟手続きもありうるでしょう。)
しかし、北京政府がそのような事態を受け入れるとは考えにくいので、国連憲章改正後に平和的統一が困難ならば武力を背景に統一を目指すでしょう。
尚、国連改革は各国の利害調整が難航し、国連憲章改正が不確実なので、その意味において上記の考察は仮定を前提とした考察です。
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2004年11月17日
台湾問題研究談話室(お気軽にどうぞ。談話用の単線型掲示板です。)
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