「恐怖の放射能」の嘘を暴く(週刊ポスト特集)のゴマカシの手口

 

以下の記事は、阿修羅掲示板に私が投稿した記事 [ 「恐怖の放射能」の嘘を暴く(週刊ポスト記事)こそ煽り記事 ] を再構成したものです。


1. 煽り批判する週刊ポスト7月29日号の特集記事のタイトルこそ煽りだ。

週刊ポスト7月29日号が [「恐怖の放射能」の嘘を暴く] という特集を組んでいる。

他の週刊誌の煽りを批判している。

そして、この週刊ポスト7月29日号の [「恐怖の放射能」の嘘を暴く] 特集の冒頭記事が [ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった。 ] というタイトル(注1)の記事である。

しかし、他社の週刊誌の煽りを批判しながら、その記事のタイトルの表現も煽り・誇張(注2)なのである。まあ、通俗週刊誌には煽りや誇張表現はつきものなので、その自己矛盾は愛嬌としても、その内容には看過できないゴマカシの手口が存在する事を示す。

2. 不都合な部分を表示しない比較不能なグラフによるゴマカシ

地上核実験が盛んだった50年前の日本が「放射能まみれ」だったと主張する事によって、あたかも今回の福島第一原発事故の放射能が地上核実験が盛んだった50年前の日本より放射能レベルが低かったと誤解させようとしているのである。

週刊ポストの上述の[ 50年前の日本は「放射能まみれ」記事には、「年代別セシウム137、ストロンチウム90の降下量」(p.36)と題するグラフがある。注意していただきたい。そこには福島第一原発事故で放出されたセシウム137、ストロンチウム90の降下量が載ってないのである。これでは比較できない。わざわざ、比較できないグラフを載せているのである。

本当は福島第一原発事故で放出された放射性物質の方が一桁多いのである。

この事は保守的な「MSN産経ニュース」記事のグラフでも紹介されている。MSN産経ニュース記事は安全としているが、グラフでは福島第一原発事故による放射性物質降下量もグラフの右端に載っていて平方メートル当たり数千ベクレルで一桁多いのがわかる。(ただし、MSN産経ニュースHPのグラフを見る場合、注意していただきたいのは、左側の目盛りが十倍、十倍となっている事だ。)

 

結局、皮肉な事に、週刊ポスト7月29日号の [ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった。 ] の表現に従えば、福島第一原発事故で「超・放射能まみれ」になったという事になるのだ。

3. 福島県の被曝量を著しく低く見せかける不当な手口

上記のゴマカシ以外にも重大な問題がある。週刊ポストの上述の[ 50年前の日本は「放射能まみれ」記事における「47都道府県別フォールアウトによる被曝量」(p.36-37)の表における福島県の2011年の被曝量推計値が異常に低い事だ。

表の左上の説明にある「環境放射線データベース」は下記のサイトを意味するものと考えられる。

http://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top

しかし、現時点では2011年のデータは表示されないようだ。また、表の左下の説明に、「2011年は6月末までの数値」とあり、本来は比較すべきでないのに比較している。

どうせ、データに連続性が無いなら、素直に公表されてる空間線量値を使えばベクレル表示データからシーベルト表示への面倒な換算計算が不要で、しかも、福島県の値が異常に小さな値になるのを避けれた事を考えると福島県の値を低く見せるために、わざわざと面倒な換算して欠測のため数値が低い福島のセシウム137降下量データを使った疑いも完全には否定はできない。また、週刊ポスト記者が単独でベクレル表示データからシーベルト表示への面倒な換算計算をする方法を考えついたか疑問であり、東京電力または電力中央研究所等の東京電力シンパの専門家の入れ知恵があった疑いも完全には否定はできないように私には思える。

茨城県が年間5.41mSvで山形県が年間1.66mSvなのに福島県が0.84mSvと異常に低い。実はセシウム137の降下量から被曝量を逆算するという誤差が大きく手の込んだ手法をわざわざ使用したため福島県の値が低くなってるのだ。実は福島県では震災でセシウム137の降下量を計測できなかった日が多かったのだ(注3)。その事は表の次ページ(p.38)の文章に書かれているのだが、週刊誌の読者の大半はそこまで注意して読まないし読んでも意味がわからない者もいるだろう。

 

これは福島第一原発地元の福島県民を不当な手法で福島県の放射線レベルが低いと誤解させる表現である。週刊ポストは福島県民に謝罪すべきだ。

4. 福島第一原発事故のあった2011年のみ内部被曝を除外する不正な手口

実は、上述の[ 50年前の日本は「放射能まみれ」記事における「47都道府県別フォールアウトによる被曝量」(p.36-37)の表において、2011年の放射線被曝量が不当に低く表示されているのは福島県だけではないのだ。日本全体で2011年の放射線被曝量が不当に低く表示されているのだ。なぜかというと、こじつけの理由によって2011年だけ内部被曝が除外され、それ以前のデータは内部被曝推定値分を含めるため4.64倍されているのだ。こんな不正までしてるのだ。(週刊ポスト記者が単独で考え付いた不正とは考えにくい専門的知識を要する不正行為だ。)「47都道府県別フォールアウトによる被曝量」(p.36-37)の表の右上には、次のように書かれているが気付いて意味が理解できた読者は少数であろう。極めて悪質である。

実際に、東京都について調べてみると、いかにひどいかよくわかる。

週刊ポストの上述の「47都道府県別フォールアウトによる被曝量」(p.36-37)の表では東京都の値は1963年が1.69で、2011年が1.31である。

しかし、元のセシウム137の降下量で比べると、「環境放射線データベース」で下記のデータが得られ、1963年5月から1964年3月までの11ヶ月での合計が毎平方キロメートル893.18MBqとなる。

尚、1964年4月は毎平方キロメートル88.8MBqなので、1963年5月から1964年4月までの合計は981.98MBqとなる。

 

また、2011年のデータは現時点では「環境放射線データベース」で検索できないので、文部科学省HPの「定時降下物のモニタリング」で調べると、(3月21日9時〜22日9時採取)分だけで毎平方キロメートル5,300MBqとなる。つまり、東京都でも2011年(3月21日9時〜22日9時採取)の一日分だけで1963年5月から1964年4月までの1年間の5倍以上なのである。それを逆転させて表示しているのである。極めて悪質である。

後述のヨウ素まで考慮に入れれば、東京都でもはるかに2011年の被曝量は多いはずである。また、文部科学省HPの「定時降下物のモニタリング」には「放射能雲」が東京都を通過・降下した2011年3月15日のデータがないが、後述のように運悪く「放射能雲」降下・通過中に屋外にいた場合はさらに大量被曝しているのである。

5. 国内で近い場所からの放射性物質放出では半減期の短いヨウ素が重要なのに無視した手口

週刊ポストの[ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった]記事には、セシウム137、ストロンチウム90の降下量だけのグラフやセシウム137の降下量から被曝量を逆算した表があるが半減期の短い放射性ヨウ素が無視されている。ところが、福島第一原発事故では放射性物質放出場所が日本国内で近いため半減期の短い放射性ヨウ素が多かった。半減期の短い放射性ヨウ素は乳幼児の甲状腺ガンを引き起こしやすい危険な放射性物質だ。この事を無視した比較では福島第一事故の危険性はわからない。尚、日本国内で起きた福島第一原発事故では3号機建屋爆発の放射能雲では(体内に蓄積しにくいものの)キセノン133が非常に強い放射線を放出していた。これも、透過力の弱いベータ線の存在を考えると、呼吸器の粘膜が薄いであろう乳幼児の体調不良を引き起こす可能性があるのに無視されていた。

6. 降下物の比較では大気中に大量の放射性物質を含んだ「放射能雲」吸入の内部被曝がわからない。

特に、福島第一原発事故では、運悪く「放射能雲」の降下・通過時に吸入すれば大量の放射性物質を吸入したであろう事が上述の週刊ポスト記事では言及されていない。

「放射能雲」については、下記の私の別記事 [ 放射能雲の存在を示した高崎CTBT放射性核種探知観測所データ] 参照。


2011年7月19日

目次

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


御意見はメールもしくは、外部リンクの★阿修羅♪掲示板[ 「恐怖の放射能」の嘘を暴く(週刊ポスト記事)こそ煽り記事 ]でコメントしてください。


(注1) [ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった。 ] というタイトルの記事の副題は下記の副題だった。

>[47都道府県 完全調査] それでも「がん」「奇形児」「知能低下」は増えていない

    

 

(注2) 記事のタイトルで、[ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった ]とあるが、50年前の日本での放射性物質は質量的には「まみれ」と言えるほどの量ではなく極めて微量だった。放射能量としても週刊ポストの主張では、「がん」「奇形児」「知能低下」は増えていないとしているので「放射能まみれ」という表現は誇張であり、福島県・茨城県・千葉県・東京都では福島第一原発事故による放射能レベルが、本文で私が述べたように2011年に関しては高かった。要するに福島県・茨城県・千葉県・東京都に関しては[ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった。 ]とする記事タイトルは誇張なのである。

誇張表現を使う事自体が「煽り」行為の存在を推測させるが、実際に何を煽ってるか読者をタイプ別に分けて考える。

 

(1)通俗週刊誌の読者の場合は記事を斜め読みする読者が多い。そのため、まず、表示が小さい副題の

 

>[47都道府県 完全調査] それでも「がん」「奇形児」「知能低下」は増えていない

 

の部分を読み飛ばした読者がいるだろう。彼らについてはヤケクソの諦め感を煽る事になる。言い換えると、副題を読み落とした読者に対しては、福島第一原発事故以前に既に大量の放射能を浴びていたなら今更神経質になる必要は無いと投げやりな態度にさせる煽りになるだろう。

 

(2)無知な原発推進派に対しては、50年前の日本が「放射能まみれ」だったのに安全だったとの当該記事の主張(実は、この主張が科学的に正しい保証は無い)と、特集の別記事[東京人気公園と関東沿岸海水浴場・放射線汚染量完全マップ](p.50-55)の空間線量値と比較して今回の放射線量が低いと誤解させる事と合わせ、誤解による誤った安心感を煽る事になるのだ。

 

(注3) 週刊ポスト7月29日号の [ 50年前の日本は「放射能まみれ」だった] 記事(p.38)には次のように書かれている。

*****

>もちろん、今年の茨城の値は5.41と非常に高い。福島がこれより低いのは、測定地点が福島市だからと推測され、

>原発に近い浜通りでは茨城を上回る数値が出ていると推量される。

>また、震源地近くでは地震で計器が壊れて、数値が記録されていない日が多いという事情もあり、

>マップのデータは実際より低い値になっている可能性が高い。

*****

しかし、この説明の前半部分は誤解を招くもので、後半部分こそ真相なのだ。また、「マップ」と述べてるが「47都道府県別フォールアウトによる被曝量」(p.36-37)の「表」は「マップ」ではなく日本地図の影絵の入ってはいるものの「表」(注4)であり、ほとんどの週刊ポスト読者は真相に気付かずに騙された可能性が高い。極めて悪質である。実際、福島市では放射性物質降下量が多かった時期は「震災対応により計測不能」だったのだ。他県で放射性物質降下量が大幅に減ってきてから計測できるようになったのである。

下記の文部科学省HP資料「環境放射能水準調査結果(定時降下物)」

http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1306948.htm

における下記データ参照。

(3月20日9時〜21日9時採取)

(3月21日9時〜22日9時採取)

(3月22日9時〜23日9時採取)

(3月23日9時〜24日9時採取)

(3月24日9時〜25日9時採取)

(3月25日9時〜26日9時採取)

(3月26日9時〜27日9時採取)

(3月27日9時〜28日9時採取)

 

(注4) 週刊ポスト7月29日号表紙にも、[ 50年前の「放射能地図」 ]とあるが、週刊ポスト編集部に確認したところ、実は「47都道府県別フォールアウトによる被曝量」(p.36-37)の「表」を意味するものだった。細かい事だが、これは誇大広告に当たるだろう。