[過去記事保存版]東京電力の暫定的国有化特別立法の必要性について

 

福島第一原発事故の主たる原因は、実は東京電力が原子力損害賠償法の「異常に巨大な天災地変」による免責を期待して最善の防災対策を採らず自社の経済的便益を防災より優先させた事なのです。(私の別記事[ 原子力損害賠償法・第三条の天災「地変」免責規定が被害を増大させた ]参照)

そのため、原子力損害賠償法の「異常に巨大な天災地変」による免責をすべきではありません。

また、東京電力が免責を主張し損害賠償を引き伸ばす可能性が高く、被害者救済が遅れる可能性が濃厚です。そのため、被害者救済のためと称して与野党の原発推進派議員が結束して、国が福島第一原発事故の損害賠償の一時的立替払いする法律を制定する可能性があります。しかし、その場合、賠償を受けた被害者はもはや東京電力に対して民亊訴追せず、東京電力の責任追及の世論も弱くなるでしょう。そして、そのような立替払いの特別法制定の場合には、立法内容ににもよりますが、立て替えた損害賠償について国が東京電力に支払いを求めて民亊提訴する事になる可能性が高いでしょう。その場合、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きの「異常に巨大な天災地変」については東京電力に立証責任があっても裁判所が甘く認定する可能性があります。それ以上に問題なのは、原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きによる免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させたために被害を増大させた事や東京電力の重過失によって被害拡大させた事については国が立証責任を負わされ、将来の政府が馴れ合い訴訟で東京電力の「人災」の追及を手抜きして、世論の追及の弱くなった数十年後に免責判決で決着する可能性も大いにあります。

尚、東京電力が原子力損害賠償法・第三条第一項但し書きによる免責規定を奇貨として防災より自社の経済的便益を優先させたために被害を増大させた事や東京電力の重過失によって被害拡大させた事から、損失は全面的に株主が負担すべきであり、東京電力を存続させて電力ユーザーへ損失を転嫁させるのは、地域独占企業としての特殊な立場の悪用であり、東京電力本体が免責されなくとも電力料金への転嫁を認めれば株主が経済的に相当程度の免責を不当に得たのと同様の効果をもたらします。尚、本日(2011年6月14日)閣議決定された「原子力損害賠償支援機構法案」(注1)は東京電力を存続させ、結果として本来は株主が負担すべき損害賠償の損失を電力料金値上げによって電力ユーザーへ転嫁させる将来の危険があるので問題があります。

混乱無く問題解決するには東京電力の十年程度の期限を区切っての暫定的国有化のための特別立法が必要かもしれません(注2)。放射能後遺障害は世代を超えて発症する可能性はありますが、十年程度で賠償総額の概算額算出は一応は可能になるでしょう。その区切った期限の到来時に残余財産が残ると推定されれば民間企業として存続させ、残余財産が無いと推定されれば完全国有化すべきでしょう。

もし仮に、その国有化の特別立法が東京電力の株主の財産権を不当に侵害するものであれば、不服な東京電力の株主は憲法の財産権保障規定に基づいて国を提訴すれば良いのです。


国有化して、経営陣一新して社内風土も一新すべきです。

今の企業体質のままでは、東京電力は巨額賠償の損失の挽回すべく東京電力流の経営努力して安全のために必要な費用を減らしかねません。

危険なのは原発だけではありません。水力発電のダムも点検せずに放置すれば決壊の危険があるかもしれません。


2012年5月10日(2011年6月14日版)

目次

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


(注1) 下記の読売新聞HPニュース記事参照。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110614-OYT1T00209.htm

>原発賠償機構を閣議決定、東電の資金繰り支援

 

(注2) すでに、みんなの党の渡辺喜美代表が2011年3月24日に東京電力国有化を提案されてるようです。

下記のSankeiBiz(サンケイビズ)HPニュース記事参照。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110324/mca1103241439010-n1.htm

>みんな・渡辺代表「東電の一時国有化を」巨額補償が必要