[注意]: 2012年5月21日にタイトルを2011年11月24日版の[ICRPもECRRもヨウ素131の実効線量係数を過大評価している]から変更しました。
ICRPとECRRのヨウ素131の実効線量係数の実質的過大評価
ヨウ化ナトリウム・カプセル(注1)という放射性ヨウ素131を利用する医薬品があります。一回投与最大量は7.4GBq(注1)です。
ここで、ICRPの経口実効線量係数2.2*10^(-8)(Sv/Bq)(注2)すなわち0.000000022(Sv/Bq)によって預託実効線量を求めると162.8Svとなります。これは瞬間的被爆の場合の致死量の20倍以上です。治療用医薬品の投与量が致死量を超えるとは考えにくいので、ICRPとECRRのヨウ素131の実効線量係数は甲状腺を除く体全体については過大評価されていると考えるべきです。
内部被曝の場合には原爆のように瞬間的に被曝するわけでないので原爆よりは致死被曝量は多いのですが、それを考慮しても162.8Svとはありえない数値です。
また、ECRRの経口実効線量係数1.1*10^(-7)(Sv/Bq)(注3)すなわち0.00000011(Sv/Bq)によって実効線量を求めると814Svとなり、これもありえない数値です。
「実効線量」の定義(注4)からすれば、そのようになるのかもしれません。しかし、甲状腺のみが極めて高い線量の被曝に晒され他の臓器の被曝線量が比較的低いままであるため上述のように甲状腺を除く体全体については過大評価につながっていると思われます。
そこで、私は暫定的に、甲状腺以外の臓器に対する被曝の影響に関しては、ヨウ化ナトリウム・カプセル添付文書(注1)に示されているMIRD法(アメリカ核医学界のMIRD委員会が開発した線量評価)による吸収線量によって考察すべきと考えます。
ヨウ化ナトリウム・カプセル添付文書(注1)によれば、37MBq投与による全身の吸収線量が11.5mGyすなわち11.5mSvなので、数日前からヨウ素摂取制限した場合の甲状腺を除く体全体の実質的実効線量係数を11.5mSv/37MBqと考えるべきと私は考えます。すなわち、甲状腺を除く体全体の実質的実効線量係数を3.1*10^(-10)(Sv/Bq)すなわち0.00000000031(Sv/Bq)とすべきと考えます。
このように考えると、ヨウ素131薬を投与された患者の追跡調査のデータから、他の放射性元素の場合の内部被曝の影響が推測しやすくなると私は考えます。
付記:
ICRPのヨウ素131の実効線量係数とヨウ素131の投与量から内部被曝の危険性の過小評価につながっている虞があります。
2012年5月21日 (2011年11月24日版はこちら)
(注1) 医薬品医療機器情報提供ホームページ資料参照
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/400022_4300003M5037_1_12.pdf
(注2) 原子力安全研究協会HP資料参照
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html
(注3) 美浜の会HP資料参照
http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_summary.pdf
(注4) 高度情報科学技術研究機構HP「原子力百科事典 ATOMICA」記事「実効線量」参照。
http://www.rist.or.jp/atomica/dic/dic_detail.php?Dic_Key=315
>身体の放射線被曝が均一又は不均一に生じたときに、被曝した臓器・組織で吸収された等価線量を
>相対的な放射線感受性の相対値(組織荷重係数)で加重してすべてを加算したものである。