3.鳥取県西部地震震源域、岩脈、溝口溶岩スコリア丘列、主要河川の方向の一致
2000年鳥取県西部地震震源域の方向(注1)とその周辺の岩脈の方向で卓越的方向(注2)、溝口溶岩スコリア丘列の方向(注3)はいずれも北北西-南南東である。そして、鳥取県西部で日野川の流路は北北西-南南東の方向とそれに直角な方向を持つ。また、岡山県の主要河川の高梁川・旭川・吉井川の流路にも弱い北北西-南南東のリニアメントが認められるようである。(尚、余震の微小地震もその方向に沿って岡山県南西部の倉敷付近にまで現れるようにも思える(注4)。)これらの事は断層破砕帯がマグマ上昇経路たりうる事を示唆する(注5)。実際、鳥取県西部地震震源域にほぼ平行な地表断層の電力中央研究所によるトレンチの壁面の井上大栄(2001)のスケッチ(注6)は、その断層面上に玄武岩岩脈の存在を示している。断層破砕帯が玄武岩マグマの上昇経路になりうるので、断層破砕帯を活性化させる大地震には注意を払うべきである。
注釈
(注1) 2000年鳥取県西部地震震源域の方向は下図参照。震源域中・南部の延長線上に大根島がある。下図で赤色の線は溝口溶岩(越敷野台地)の火口丘列を示す。
(注2) 服部仁・片田正人(1964)地質図幅「根雨」説明書・第10図参照。尚、服部仁・片田正人(1964)は地質図幅「根雨」地域の苦鉄質ないし中性岩脈の方向は基盤岩である花崗岩の主だった節理系とほぼ一致するとしている。しかし、佐藤正(2003)は節理と断層は区別が難しく岩石中の割れ目を厳密に節理と断定するには割れ目の面上に「羽毛状構造」を確認するしかないとしており、たとえば筑波山塊の花崗岩の割れ目の大部分は厳密には断層だとする。この場合、それらを断層と認定すれば地質図幅は断層だらけになって収拾がつかなくなるので、服部仁・片田正人(1964)の花崗岩の主だった節理系と言う場合の節理には厳密な意味での断層も含まれていると見るべきであろう。実際、服部仁・片田正人(1964)には「一般に岩脈は母岩との間に、薄層の粘土を挟む節理を伴っている。」との表現があり、それは断層粘土の存在を意味するものと思われ、服部仁・片田正人(1964)のいう「節理」は厳密には断層も含むものであると考えられる。
また、地質図幅「根雨」の北北西の地質図幅「境港」では北北西-南南東の塩基性・中性岩脈の卓越が指摘され、地質図幅「根雨」の北西の地質図幅「松江」では西北西-東南東の塩基性・中性岩脈の卓越が指摘されている。特に、地質図幅「境港」北部での北北西-南南東の塩基性・中性岩脈の卓越は2000年鳥取県西部地震震源域からの北北西-南南東の塩基性・中性岩脈の卓越する地質構造の延長の可能性が考えられる。
地質図幅「根雨」周辺の地質図幅の配列は下記のとおりである。(上が北)
境港 |
美保関 |
松江 |
米子 |
横田 |
根雨 |
(注3) 大田良平(1962)、服部仁・片田正人(1964)、5万分の1地形図「米子」「根雨」、岡田龍平・山内靖喜(1997)参照。
下の地形図は大山アークカントリークラブ(ゴルフ場)・とっとり花回廊( 鳥取県立フラワーパーク)造成前の旧地形を示す。
↑日野川と朝鍋川にはさまれる台地が越敷野玄武岩台地(別名:鶴田玄武岩・溝口溶岩)
尚、周辺との位置関係については(注1)の地図の参照。
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(注4) たとえば、以下の防災研究所HP・Hi-net地震画像・鳥取県西部:2004年4月5日午前9時15分から2004年4月6日午前9時15分まで参照。鳥取県西部と岡山県北部と中部の微小地震が2000年鳥取県西部地震の延長線上に並んで発生している。
(注5) 断層破砕帯が地下水を通す事はトンネル工事関係者に昔から知られており、最近ではマントル起源の非火山性温泉も断層破砕 帯が関係していると考えられるようになっており、また、断層破砕帯から上昇してくるラドンの放射線測定によって断層や温泉を発見する事まで行われている事 から断層破砕帯は液体・気体を良く通すと考えるべきなので、台湾-宍道褶曲帯上の小規模玄武岩火山の粘性の低い玄武岩マグマも断層破砕帯から上昇してきた 可能性は高いと思われる。 西日本においても伏在断層の断層破砕帯が小規模玄武岩火山のマグマ上昇に関与している可能性は高いと思われる。尚、台湾本島北部の小規模玄武岩火山と断層の位置的対応関係が高いようである。
台北市立第一女子高級中学地球科学学習HP 参照。
http://earth.fg.tp.edu.tw/learn/twrock/class1/location14.htm
中国(台湾)国立自然科学博物館HP 参照。http://www.nmns.edu.tw/89volcano/out-231.htm
http://www.nmns.edu.tw/89volcano/out.htm
(注6) 井上大栄(2001):2000 年鳥取県西部地震における地震断層の活動履歴調査.電力中央研究所2001年版研究年報
http://criepi.denken.or.jp/jp/pub/annual/2001/01seika53.pdf
ただし、私は、日野町久住の断層が出雲地震の震源断層との井上大栄(2001)の結論には同意できない。なぜなら、井上大栄(2001)は電力中央研究所の研究員という立場のためか西暦880年の出雲地震と2000年鳥取県西部地震の被害状況が非常に似ているとウソをついており、しかも、そのC14放射性炭素年代測定の前提条件にも問題があり、リニアメント判読においても第三紀以前の断層の弱線の差別浸食を第四紀の変位としている疑いが濃厚だからである。詳細は私のHPにまとめてある。
http://ss7.inet-osaka.or.jp/~asami/gadenn_innsui/lie_CRIEPI.html
参考文献・参考HP
防災研究所HP
服部仁・片田正人(1964):5万分の1地質図幅「根雨」、地質調査所
佐藤正(2003):地質・土木技術者のための地質構造解析20講、近未来社
大田良平(1962):5万分の1地質図幅「米子」、地質調査所
井上大栄(2001):2000 年鳥取県西部地震における地震断層の活動履歴調査.電力中央研究所2001年版研究年報, 106-107,図3
http://criepi.denken.or.jp/jp/pub/annual/2001/01seika53.pdf
岡田龍平・山内靖喜(1997):「越敷原台地」;鳥取の自然をたずねて(赤木三郎 編)、p.201-207 築地書館2004年5月20日
(談話室)「オクトパスアイランド」 (お気軽にどうぞ)