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2005年10月8日時点では、沖ノ鳥島に排他的経済水域なし

2005年10月8日時点では沖ノ鳥島沖に関して「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」は国際法違反である。

 

沖ノ鳥島は単一の「島」ではなく、東小島(登記簿上の面積・1.58平方メートル)と名づけられた岩と北小島(登記簿上の面積・7.86平方メートル)と名づけられた岩の二つの「島」から構成される。そして東小島と北小島は低潮時には東小島と北小島以外にも一部が海面上に露出する東西が約4.5km、南北が約1.7kmの環礁内にある。また、高潮時でも海面上に露出している東小島と北小島の2個の岩の本体を波浪から護るため特殊なコンクリート防護壁の人工島(注1)で周囲が囲われている。そして、それ以外に環礁内の低潮時にも海面下にある海底の上に高床式の観測施設がある。2005年10月8日時点では、その高床式の観測施設は居住可能であるが無人だった(注2)。もちろん、東小島と北小島の岩の本体上には人間が居住できないのは明白である。

日本の海上保安庁は2005年10月8日、沖ノ鳥島沖12海里外200海里内(実際には沖ノ鳥島北方約240kmすなわち約130海里沖合い)において「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律(漁業主権法)」(注3)違反容疑で台湾漁船を拿捕した。そこで根拠となったのは日本の全ての島に例外なく一律に排他的経済水域を設定している日本の「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(注4)である。

しかし、国連海洋法条約・第121条3項(注5)は、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。 」としており、2005年10月8日時点で無人で独自の経済的生活を維持する事ができないのが明白な沖ノ鳥島には国際法上、排他的経済水域の設定が認められない。つまり、日本は国連海洋法条約に違反して沖ノ鳥島沖に違法な排他的経済水域を設定し、それを根拠に台湾漁船を拿捕したのである。台北政府は国連から追放されているため国連海洋法条約を締結できないでいるが台北政府が日本と同様に「無人で独自の経済的生活の維持できない岩」に排他的経済水域を設定していない限り台湾漁船の拿捕は不当・違法である。

 

尚、2005年10月8日時点で環礁内の低潮時にも海面下にある海底の上に高床式の観測施設は無人だったが、仮に人が居住していても環礁内の低潮時にも海面下にある海底すなわち「低潮高地(国連海洋法条約・第13条参照)」(注6)ですらない純然たる海上に建設されているため、東小島と北小島は無人島である。また、日本政府は沖ノ鳥島に排他的経済水域を確保するため、灯台の建設を予定し「独自の経済的生活を維持」していると主張する準備をしている。しかし、その場合でも問題点が二つある。まず、第一に、灯台を高床式の観測施設上に建設する予定だそうだが、その高床式の観測施設は低潮時でも海面下にある場所に建っており「低潮高地(国連海洋法条約・第13条参照)」ですらない。つまり、いくら灯台を造っても海上に造ったのでは独自の経済的生活を維持できる島とは認めがたいのである。さらに、灯台だけでは「独自の経済的生活を維持」しているとは言いがたい。しかし、灯台建設後も長期にわたって日本の拿捕に抗議する国がなければ慣習法に依存する面が大きい国際法では国連海洋法条約の「島」の範囲の解釈が将来において変更される可能性がないとまでは断言しない。もし、国連海洋法条約の解釈が将来において変更され、低潮時においても全体が海面上に出ない環礁の全体にまで「島」の範囲が認められれば、環礁内に灯台と共に暴風時の漁船用退避施設(注7)も合わせて造れば「独自の経済的生活を維持」しているとの主張が将来においては国際法廷においても認められるかもしれないし、常勤職員の宿舎付きの海洋研究所を造れば人が居住していると認められるかもしれない。しかし、それは将来の話であって、2005年10月8日時点での沖ノ鳥島12海里外200海里内での台湾漁船拿捕は明白に国連海洋法条約・第121条3項に違反した不当な拿捕であったのは明白である。


(注1) 人工島は国連海洋法条約の「島」ではない。(国連海洋法条約・第121条1項参照)

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(注2) 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所に電話で2005年10月8日時点で無人だった事を確認。しかし、仮に高床式の観測施設内に居住者がいたと仮定し、さらに「島」の範囲を「低潮高地(国連海洋法条約・第13条参照)」まで含むと解釈しても、高床式の観測施設は低潮時においても海面下にある海底の上すなわち「低潮高地」ですらない純然たる海上に建設されているため、沖ノ鳥島は無人島である。

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(注3) 総務省・法令データ提供システムHP・排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H08/H08HO076.html

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(注4) 総務省・法令データ提供システムHP・排他的経済水域及び大陸棚に関する法律

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H08/H08HO074.html

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(注5) 海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)

第121条 (島の制度)

1 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。

2 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。

3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

*****

尚、下記の国連HPに海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)の英文がある。

http://www.un.org/Depts/los/convention_agreements/texts/unclos/closindx.htm

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(注6) 第13条 (低潮高地)

1 低潮高地とは、自転に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するものをいう。低潮高地の全部又は一部が本土又は島から領海の幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海の幅を測定するための基線として用いることができる。

2 低潮高地は、その全部が本土又は島から領海の幅を超える距離にあるときは、それ自体の領海を有しない。

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(注7) 環礁内に漁船退避施設を造るというのは環礁に水路の出入り口を確保せねばならない。しかし、旧日本軍が水路の出入り口を造った事が原因で外海の潮の干満によって環礁内に潮流を生み出し環礁内の砂が外海に流出した疑いがある。それゆえ、環礁内に漁船用退避施設を造る場合には砂流出防止のため漁船用退避水域と他の環礁内部の水域を隔てる堤防も必要になる。しかも、漁船用退避水域はコンクリート堤防だけでなく環礁も利用せねばならない。しかし、それには巨額の建設費が必要であり、そのような工事をしても国際法廷で排他的経済水域が認められる保証はない。さらに、採算を度外視してそのような大規模工事をすれば余計に「独自の経済的生活の維持」から離れるとの批判も受ける可能性もある。

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2005年10月20日

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp

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