[注意]:この記事は2009年の記事です。(2012年5月12日追記)


[過去記事保存版]:インフルエンザワクチン添付文書の不正と不適正

 

1.添付文書の不正と不適正

 日本のインフルエンザ・ワクチンの添付文書(注1)には有効性に関する臨床データに関して不正と不適正があります。

 まず、1972年以降の日本のインフルエンザ・ワクチンは効果が不活性化したウイルスの表面の糖タンパクのHA・NA成分だけを利用する成分ワクチン(HAワクチン)で効果が低いものの副反応が小さいものです。ところが、1971年以前に使われていた不活性化したウイルスの全体を利用する全粒子ワクチン(注2)という効果が高いものの副反応も大きい別のワクチンの有効性の臨床データを現在のインフルエンザ・ワクチンの添付文書に載せているのです。つまり、現在のインフルエンザ・ワクチンの添付文書には別の薬剤のデータを載せている不正があるのです。そもそも承認段階で別の薬剤(全粒子ワクチン)のデータの不正流用の疑いもあります。これは薬事法54条違背です。

 さらに、インフルエンザ・ウイルスが毎年変異するため、インフルエンザ・ワクチンは次に流行すると思われる変異株に対応して製造されるため流行予測がはずれると有効性は非常に低くなります。2003年以降は有効率が低い状況(注3)が続いています。単に流行予測がはずれただけでなく別の原因で有効性が低い状態が続いているのかもしれません。しかし、その有効率の低い2003年以降のデータは添付文書に載っていません。製薬会社にとって不都合な年度のデータは添付文書に載せなくても良いシステムになっているからです。これはインフルエンザワクチン添付文書の構造的不適正です。

2.その他の問題点

 尚、上記の不正や不適正以外にも問題点があります。添付文書に不正流用されている[Sugiura, A. et al. (1970)]の感染防止の有効率が80%が皮下注射では高すぎる数値ですが、疑問に思って調べたら、抗体価が4倍以上になったら感染とする判定 基準に問題がある事を発見しました。ワクチンは抗体価を上昇させる薬剤で、ワクチン接種者はワクチン接種で抗体価が上昇するので感染前にすでに抗体価が高いため、非接種者と同じだけ抗体が増えても、事前の抗体価の低い非接種者は抗体価が4倍以上になりワクチン接種で感染前に抗体価が高くなった接種者は感染で同じだけ 抗体が増加しても抗体価が4倍にならない場合があるかもしれない不公平な判定基準に問題があったのです。

 そして、添付文書で、98/99シーズンにおける調査結果として死亡阻止効果が82%とする根拠の文献・[ 神谷齊 他:「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」・厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)、総合研究報告書(平成9〜11年度) ]では、老人保健施設や特別老人ホーム等の高齢者を対象に調査したが、クジで接種か非接種を決めたのでなく希望・同意によって分けており、接種群と非接種群の高齢者の健康状態が同等である保証がないのです。しかも、接種群と非接種群の事前の健康状態の比較のデータもありません。(接種希望者より非接種者の方が認知症の程度が重度の者が多かったり健康状態が悪くてワクチン接種できなかった者が非接種群にいた可能性が報告書を見る限り排除できません。) 

3.厚生労働省やワクチンメーカーの隠蔽体質と、長妻昭厚生労働大臣やマスコミの消極姿勢

 上記の不正や不適正は私の追及によって今では厚生労働省やワクチンメーカーの担当者は知っており添付文書の欠陥を認め改訂に向けて検討中という事ですが、改訂予定時期も不明ですし、まず、とりあえず公表すべきにもかかわらず11月4日から公表せずに現在に至っています。もしかしたら、ワクチンメーカーが今シーズン用に製造したワクチン全部が接種された後でコッソリと添付文書を改訂するつもりかもしれません。厚生労働省の隠蔽体質(注4)は重大な問題です。

 また、長妻昭厚生労働大臣にも何度かメールし議員事務所にも何度か電話しましたので、伝わってるはずですが、公表されませんでした。民主主義の基本は情報開示なのに情報開示されない長妻昭厚生労働大臣の姿勢には失望しました。みなさんもぜひ、長妻昭厚生労働大臣に公表要請してください。(長妻昭厚生労働大臣の議員事務所のホームページはこちら) また、NHKにも再三にわたり報道要請しましたがNHKは報道に消極的です。製薬会社からの広告収入を得ている民放各社と異なり視聴者からの受信料で運営されてる公共放送でありながら視聴者よりワクチンメーカーや製薬会社の側に立つNHKの消極姿勢には憤りを感じます。みなさんもぜひ、NHKに報道要請するか抗議するかしてください。(NHKへの意見はこちら

4.インフルエンザワクチン接種すべきか否かの判断には副作用(副反応)情報だけでなく、有効性情報や流行情報も重要

 ここで注意すべきは、ワクチンの有効性と安全性はワクチン接種すべきか否かの判断において双方とも重要だという事です。ワクチンを打つべきか打たざるべきか悩んでおられる方には安全性情報だけでなく有効性情報も適正に開示すべきです。

 インフルエンザワクチンを接種すべきか否かの判断では、少なくとも流行状況や流行予測に基づく感染可能性を前提に、副作用(副反応)というマイナス要因を超える有効性があるか否かで判断せねばなりません。つまり、有効性情報は副作用(副反応)情報(注5)と同じくらい重要なのです。尚、2009年12月2日現在では新型インフルエンザは当面の流行のピークにあると考えられるだけでなくインフルエンザワクチンが効果を発揮するのに2週間以上かかる事を考え合わせるべきです。もちろん、年を越してから再度流行する可能性も否定はできませんが、年を越してから再度流行する場合にはワクチンがあまり効かない変異株(注6)が流行している可能性もあります。さらに、抵抗力のない人がワクチンがあまり効かない変異株に感染して「抗原原罪」(注7)現象が起きれば逆にワクチン接種したために重症化する危険があるかもしれません(注8)

 尚、インフルエンザ・ワクチン接種に医療機関に行く事自体が感染の危険を増大させます。実際、予防接種時に感染してお亡くなりになられた可能性のある事例もあります(注9)


(注1) すべてのワクチン・メーカーの(新型ワクチンも従来型の季節性ワクチンも)インフルエンザ・ワクチンの添付文書の「臨床成績」の「有効性」のデータは同じデータが使われています。 (デンカ生研株式会社製造の季節性インフルエンザ・ワクチンの添付文書参照)

http://www2.takedamed.com/content/search/doc1/pdf/127.PDF

(注2) タイプが異なる千葉県血清研究所(現在は存在しない)の商用の全粒子ワクチンのデータが流用されているのです。インフルエンザワクチン添付文書の参考文献3の[Sugiura, A. et al.(1970)]によれば、その調査で使用されたワクチンは「Chiba Serum Institute, Ichikawa, Chiba,Japan」製の「commercial inactivated influenza vaccine」とあります。1971年以前に日本で商業生産されていたインフルエンザワクチンは全粒子ワクチンだったのでSugiura, A. et al.(1970)の調査で使用されたのは全粒子ワクチンであった事がわかります。

(注3) 日本臨床内科医会HP・「インフルエンザ」PDFファイルの13ページ目の有効率のグラフ参照

http://japha.umin.jp/booklet/series/pdf/series033n.pdf

 大垣セントラルクリニックHPにおける「各年齢層におけるA型インフルエンザに対するワクチン有効率(%)の推移」の表参照

http://www18.ocn.ne.jp/~ogccl/infuluenza.html

尚、現時点(2009年11月9日時点)では未発表ですが、(2008-09)シーズンの有効率も低いはずと思われます。今年1月に(認知症の高齢者の)鶴川サナトリウム病院でワクチン接種した認知症の高齢者の大量院内感染が起きたからです。

(MSN産経ニュース記事参照)

http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/090117/dst0901171908017-n1.htm

(鶴川サナトリウム病院HP記事参照)

http://www.ims.gr.jp/turukawa/090117.pdf

(注4) ワクチンメーカーや厚生労働省の官僚諸氏はインフルエンザワクチン添付文書改訂の方向で検討すると述べていますが、一時は改訂は来年になると述べたり不正流用でないと開き直る官僚もいて添付文書改訂がいつになるか不明です。また、厚生労働官僚諸氏は私のデータ流用の事実公表要請を無視しています。

(注5) 厚生労働省HPの「新型インフルエンザワクチンの接種後副反応報告及び推定接種者数について」PDF参照

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/11/dl/infuh1126-02.pdf

(注6) たとえば、下記の二つのブログで紹介されているD225変異株。

 「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」の記事「遺伝子変化でワクチン無効に?(D225G recombinomics)」参照。

http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/d1f34d15e365de9d8ab7bdd24eb6720d

「Sasayama’s Weblog」記事「D225G変異H1N1新型インフルエンザ・ウイルスに対してワクチン不全ありとWHO確認」参照。

http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=1216

(注7) wikipedia「抗原原罪」Sasayama’s Weblog記事[新型インフルエンザ・ワクチン投与で、抗原原罪を懸念する声が専門家の間にある。]参照。

(注8) 高齢者が流行予測がはずれたインフルエンザ・ワクチン接種すれば、「抗原原罪」(注7)現象により効果の低い類似の抗体のみ生産され本来ならば生産されるであろう抗原に完全に適合した抗体の生産が低くなって逆効果になる危険があるかもしれないと私は危惧しています。ワクチン接種すれば変異株にもある程度は効くがそれほどには効かない抗体が感染前に体内で造られます。そのため、感染直後はワクチン接種していれば変異株に対してもある程度は効果があるのですが、もし仮に「抗原原罪」現象が起きれば、変異株に感染後も変異型にある程度は効くがあまり効かない抗体が量産され続け感染直後は軽症でも治りにくく重症化しやすくなる危険があります。逆にワクチン接種してない場合には最初は抗体がほとんど無いので症状が厳しくとも、次第に完全適合する抗体が造られ比較的治りやすい可能性があるのです。

実際、カナダでの事例(タミフルの効果を調べるため比較としてワクチン接種者のデータも載っている調査報告の論文[Allison McGeer 他(2007):Antiviral Therapy and Outcomes of Influenza Requiring Hospitalization in Ontario, Canada; Chicago Journals-Clinical Infectious Diseases]の表3のデータで死亡者のワクチン接種率79%が生存者のワクチン接種率71%より高いだけでなく当時のカナダ・オンタリオ州の高齢者のワクチン接種率77%より高い事から、死亡阻止に関してワクチン接種はわずかながら逆効果の疑いがあります。また、日本でも2009年1月に発生した鶴川サナトリウム病院でのインフルエンザ・ワクチン接種者の大量院内感染での3人の死者がいずれもインフルエンザ・ワクチン接種者ただった事(注10)から死亡阻止に関してワクチン接種はわずかながら逆効果の疑いがあります。さらに、日本臨床内科医会の調査結果(日経メディカル オンラインHP記事参照)での2002-03シーズンでの80才代高齢者でワクチン接種者の感染が非接種者より多い事から発症阻止に関してもわずかながら逆効果の疑いがあります。ただし、以上の三例は症例が少ない等の問題があるため、流行予測がはずれたシーズンのワクチン接種が逆効果であると断定するには不十分な資料ですが、高齢者の死亡阻止効果に関してワクチン接種による死亡阻止効果82%とする結果だけを掲載するインフルエンザワクチン添付文書の信頼性に関して私は重大な疑問を持っています。

(注9) 厚生労働省HPで2009年12月1日付けの報道発表資料の「新型インフルエンザ感染者の死亡について(83例目)(鹿児島県)」

http://www-bm.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/12/dl/infuh1201-01.pdf

によれば、11月30日に亡くなられた鹿児島県の70代の男性は、11月20日に新型インフルエンザワクチン接種され26日発症されており、感染源・感染経路不明なので、新型インフルエンザワクチン接種時に感染した疑いがあります。

(注10) 鶴川サナトリウム病院看護婦のコバヤシさんへの電話問い合わせによる。


本項目作成の経緯

本項目作成は「NATROMの日記」というブログの「2009-09-25 シートベルトは死亡を防がない? ニセ科学を見抜く練習問題シリーズ」というエントリーのコメント欄での議論から発展したものです。(「NATROMの日記」著者で奇弁家のNATROM医師が第三者の宮田一雄・産経新聞記者のブログでの「桜子」さんという方のワクチンに関するコメントを批判しやすいように無理やり改変のうえ引用して「ニセ科学」の題材として批判した記事に関する議論です。)

その議論の過程において、私は現行インフルエンザHAワクチン添付文書の「臨床成績」の「有効性」に2003年以降の低い有効率のデータが載せられていない事に気づき、それを厚生労働省の官僚や製薬会社のくすり相談センターの担当者を追及した結果、ワクチンメーカーにとって不都合なハズレ年の低い有効率のデータを載せなくて構わないシステムになっている事に気づきました。

また、私が現行インフルエンザHAワクチン添付文書の「臨床成績」の「有効性」に全粒子ワクチンのデータが流用されてる事に気付いたキッカケは、「桜子」さんというハンドルネームの方の「NATROMの日記」というブログの「2009-09-25 シートベルトは死亡を防がない? ニセ科学を見抜く練習問題シリーズ」というエントリーのコメント欄での指摘によります。(その後、厚生労働省のインフルエンザワクチン添付文書担当の官僚諸氏を追及し、全粒子ワクチンのデータの流用を確認させました。また、現時点ではすべてのワクチンメーカーも全粒子ワクチンのデータである事を認めています。尚、「桜子」さんのブログはこちらです。)

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090925#c110109226

>桜子 2009/10/29 23:49

>・・・・・(中略)・・・・・

>インフルエンザワクチンの添付文書について、桜子は以下のように考えております。

>?@発症阻止の有効率が高く出ている論文は、二重盲検法で行われていますが、

>これは40年前のことで、この時に使用されていましたワクチンは全粒子ワクチンです。

>現在使用されているワクチンはHAワクチンで、ワクチンが違いますから、そのまま当てはめることが出来ません。


目次

2009年12月10日(当初の2009年11月3日版はこちら)

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp