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 小惑星探査機「はやぶさ」の小惑星「イトカワ」への着陸は確実なのか?

 

Yahooニュース(共同通信)・[ 探査機はやぶさ着陸できず 25日にも再挑戦へ ] によれば、

宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は20日午前6時前、地球から約2億9000万キロ離れた小惑星イトカワに

>探査機「はやぶさ」を降下させ、着陸を試みた。しかし、はやぶさは予定時刻を過ぎても小惑星近辺から動かず、

>宇宙機構は地上からジェット噴射の指令を送信。はやぶさは再び高度を上げた。

>宇宙機構は同日午後、「送られてきたデータからは、着陸には至っていないと考えられる」と発表した。

 

とある。

 

しかし、宇宙科学研究本部は2005年11月23日になって、11月20日の発表の訂正のニュース記事を宇宙科学研究本部HPに載せた。

その宇宙科学研究本部HP・2005年11月23日発表記事:[ 「はやぶさ」の第1回着陸飛行の結果と今後の計画について ]によれば、

その後予定どおりに重力による自由落下が行われて、日本時間の午前6時10分頃に距離がほぼ ゼロとなって、着陸が行われたことです。

 

とある。

 

しかし、探査機「はやぶさ」にレーザー距離計が搭載され、「イトカワ」地表との距離がほぼゼロ(注1)になったという単純明快なデータが「素」のデータとして当初から得られていたなら、どうしてデータ受信後数時間経ってから記者発表で着陸に失敗したとの発表をしたのか疑問に感じる(注2)。さらに、宇宙科学研究本部HP・2005年11月23日発表記事:[ 「はやぶさ」の第1回着陸飛行の結果と今後の計画について ] を検討してみると高度計の代用(注3)として利用している距離計による探査機「はやぶさ」と小惑星「イトカワ」の距離計計測値の時間変化のグラフ(当該ニュース記事の図4a 着陸時の近距離レーザー距離計の計測値履歴)とその説明に矛盾があるのが判明した。

 

縦軸は「はやぶさ」の距離計の計測値(単位はm)、横軸は2005年11月19日におけるグリニッジ標準時刻

 

宇宙科学研究本部HP・2005年11月23日発表記事:[ 「はやぶさ」の第1回着陸飛行の結果と今後の計画について ]  では、

>距離計の情報が示すことは、一旦17m 付近で地形にならう制御への移行が行われた際に、

>やや高度を上げる現象が見られ、その後予定どおりに重力による自由落下が行われて、

>日本時間の午前6時10分頃に距離がほぼ ゼロとなって、着陸が行われたことです。

>それ続いてさらにもう1回のバウンド現象がみられた後、高度をほぼゼロに保ったまま

>推移した期間が約30分間持続しました。

 

との解説があった。つまり、跳ね返ったと説明している。しかし、グリニッジ標準時刻・2005年11月19日21時9分頃(日本時刻・2005年11月20日午前6時9分頃)に距離計の値が0m近くになっているが、グリニッジ標準時刻・2005年11月19日21時9分頃(日本時刻・2005年11月20日午前6時9分頃)から21時12分頃(GMT)までの間に距離計の値が30mを超えている。つまり、跳ね返ったとの説明だけでは、21時9分(GMT)頃から21時12分(GMT)頃までの約3分間の距離計の測定値(下のグラフの青色枠部分参照)の説明がつかないのである。21時9分(GMT)頃から21時12分(GMT)頃までの約 3分間(下のグラフの青色枠部分)が存在しなければ、21時12分(GMT)頃から21時30分(GMT)頃まで(下のグラフの黄色枠部分参照)と、21時30分(GMT)頃から21時36分(GMT)頃まで(下のグラフの赤色枠部分)が、それぞれ第一回目の跳ね返りと第二回目の跳ね返りとして宇宙科学研究本部 の説明は妥当と言える。しかし、宇宙科学研究本部 の説明 では21時9分(GMT)頃から21時12分(GMT)頃までの約 3分間(下のグラフの青色枠部分)の存在の説明がつかないのである。

 

この事は、低高度において高度計の代用になって着陸判定(注6)に使用されているレーザー距離計のデータの信頼性に疑念を抱かせるものであり、日本時刻・2005年11月20日だけでなく、日本時刻・2005年11月26日についても着陸判定の確実性に疑念が生じる。


注釈

(注1) 「ほぼゼロ」というのは「はやぶさ」の機体の最下部から距離計までの高さと測定誤差のためである。

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(注2) それ以外にも、宇宙航空研究開発機構は2005年11月26日に、小惑星「イトカワ」の岩石採取のため予定どおり金属球を発射した旨の発表を行った(注4)が、2005年12月7日になって金属球は発射されておらず「イトカワ」の岩石採取に失敗した可能性があるとの訂正発表を行った(注5)

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(注3) 「イトカワ」がいびつなためジオイドと地表の不一致からレーザー高度計の正確さに問題が生じる可能性があり、また、自由落下中には慣性航法とリンクさせるような複雑な機構がなければ正確に鉛直下方にレーザー照射するのが困難な事から「イトカワ」地表付近での自由落下中には「レーザー高度計」でなく「レーザー距離計」しか利用できなかったのであろう。しかし、「はやぶさ」と「イトカワ」地表面の距離がゼロになれば「はやぶさ」が「イトカワ」に着地した事がわかる。

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(注4) Yahooニュース(共同通信)・[ 小惑星離脱、地球帰還へ 岩石採取を確信と宇宙機構 ] 参照。

(注5) Yahooニュース(共同通信)・[ 岩石採取は失敗の可能性 小惑星探査機はやぶさ ] 参照。

(注6) 着陸判定には低高度において高度計の代用になっているレーザー距離計だけでなく、地球上で計測された計測されたドップラー速度履歴から求めた地球視線方向への成分の速度や距離も補助的に使用されている。

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参考HP

宇宙科学研究本部HP・2005年11月23日発表記事:[ 「はやぶさ」の第1回着陸飛行の結果と今後の計画について ]

日本経済新聞・「プロの視点」HP・清水正巳著・[ 研究の失敗に寛容な風土はできるか ]

松浦晋也のL/D・ [ 「はやぶさリンク」:日経新聞・清水正巳編集委員の記事に関して ]


 2005年12月30日

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp

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