(注意)で きるだけ正しく有用な記載を目指して書いていますが不正確な点があるかも知れません。マスク再使用には危険が伴う事に十分に留意し、自己責任でお願います。


やむを得ずマスクを再使用する場合の注意


マスク再使用考察の経緯

   使い捨てマスクの再使用は危険が伴うので本来ならば避けるべきです。しかし、 一般人の場合、十分な分量のマスクの備蓄が無く購入も困難な場合があります。そのため、やむをえずマスクを再利用せざるを得ない場合もあります。

   また、一般人の使用したマスクは医療関係者が使用したマスクのように大量のウィルスや有害菌にさらされて いない場合もありま す。そのため、十分に注意を払えば再利用の余地はあります。(ただし、抗菌・抗ウィルス素材の使われていない通常の使い捨てマスクでは至近距離から く しゃみや咳の大粒の飛沫の直撃をマスク外側にベットリと受けた場合には、安全な場所に到着直後に新品と交換すべきです。)



 [ 注意・1: ガーゼ マスクやFSCマ スクのように再利用を前提に作られているマスクで、そのパッケージ等に説明が記載されてる場合には記載の方法に従ってください。]

 [ 注意・2: 直径1mm以上の大粒の飛沫の直撃を受けた場合は非常に危険なので、早急に安全 な場所に行き新品のマスクと交換し、再使用しないでください。]
 
 [ 注意・3:  以下の内容は一般人向けのものです。医療関係者のマスクの再使用は、(フェ イス・ガ−ド未着用の場合には)多量のウ イルス付着の場合が多く、また、マスク再装着時に手袋にウイルスが付着し(マスク着用直後に手袋を交換せねば)未感染の患者を感染させる危険があり、 N95やDS2等の高性能マスクは分厚く乾燥させるのに時間がかかりカビや腐敗の危険があるため、ここでは述べませ ん。しかし、フェイス・ガ−ドを着用し手袋交換すれば医療用マスクでも再利用の余地は あるかもしれません。また、N95規格マスクやDS2規格マスクのような高捕集性能・高密着性のレスピレー ター型のマスクについては、マ スクのフィット・テストの用具を保有している大病院では次亜塩素酸水のスプレー によるウイルス不活性化をしてもマスクが劣化しないか試す余地はあると思います。]



一般人の使い捨てマスクの再使用法と注意点 


(1) 再使用を前提として使う 場合には口元を清潔にしてから着用してください。

(2) マスクを再使用する場合、一度使用したマスクの外側にはウィ ルスが付着 してる危険を認識してください。そのため、マスクの外側と内側は 必ず区別し てく ださい。

(3) カビや有害菌や雑菌の繁殖の危険に 留意し、やむ を得ず再使用をする場合は、変 色・異臭(新しいマスクの臭いと は別の臭い)・異常がないか確認してから 再使用してく ださい。

(4) 再利用の場合、マスクが劣化してくる危険を認識してください。マスクには寿命が あります。やむ を得ず予定された寿命を超えて使用される場合は自己責任で十分に確認してくだ さい。特に、耳にかける部分がソフトな不織布でできているマスクは繰り返し使用すると緩んでくるので危険です。また、マスクのフィルターはポリプロピレン不織 布のため、紫外線に弱く、紫外線によってポリプロピレンの微細な繊維が損傷します。そのため、直射日光に当たると劣化が速く進行し ます。初夏や真夏の強い日差しの屋外 でマスク着用される場合はマスクのフィルター繊維の損傷による性能劣化を考慮してください。

(5-1) マスクのウイルス汚染度について、ほとんどウイルスが付着していないと考えられる場合には、子供の手の届かな い乾燥した場所で陰干し再使用してください。(カビや有害菌や雑菌の繁殖防止のため、最低 一日一回は完全に乾燥させてくださ い。)

(5-2a)
マスクのウイルス汚染度について、満員列車や満員バスや病院の待合室や混雑する場所で着用した場合のように、あ る程度ウイルスが付着していると考えられる場合でかつ、子 供の手の届かな い暖かい場所 (注1) で 陰干しできる場合は、(必要に応じて複数枚のマスクのローテーションにより)再使 用までに24時間以上 の時間をかけて陰干しをして完全に乾燥させてください。完全に乾燥させても 感染活性のあるウイルスが残存している可能性があるのでマスク装着後 に手を洗ってください。
   勤務先や通学先に乾燥保管できる個人用ロッカーがある場合は複数枚のマスクのローテー ションで食事後に交換される事を推奨します。ただし、直径1mm以上の大粒の飛沫の直撃を受けた場合
(注2) は非常に危険なので再使用しないでください。また、マスク表面はウイルスで汚染されている事を忘れずに注意してく ださい。
   尚、
新型コロナウイルスは飛沫核感染 (空気感染) の可能性が排除できないため、飛沫核阻止能力の低い家庭用マスクやサージカルマスクでは、 5分以上24時間未満の中途半端な時間マスクをはずした後に再着用するとマスクのフィルターに捕集されていた飛沫が 乾燥して飛沫核になって遊離してフィルターを通過してマ スク内に侵入して感染する危険が排除できません。飲み物休憩で引き続き同一のマスクを再着用する場合は 5分未満で再着用される事を推奨しま す。

(5-2b) マ スクのウイルス汚染度について、満員列車や満員バスや病院の待合室や混雑する場所で着用した場合のように、あ る程度ウイルスが付着していると考えられる場合で、子 供の手の届かな い暖かい場所で24時間以上の陰干しができない場合は、後述の次 亜塩素酸水のスプレーを試みてください。(ただし、次亜塩素酸水スプレー法の効果もマスクが劣化しないかについても、私は多分大 丈夫だろうと憶測しているだけで確認はしていません。)



「陰干し法」と新 型コロナウイルスの感染力持続時間に ついての考察:

   
陰干しによる乾燥によって、一 旦はマスクのフィルターに捕集された飛沫が飛沫核となって、その一部フィ ルターから遊離し、飛沫核阻止能力の低い家庭 用マスクやサージカルマスクではそ の一部がフィルターを通過してしま う。問題は飛沫核の感染活性の有無である。新型コロナウイルスの飛沫核の感染活性について、二つの見解 がある。日本の専門家の多くが支持 すると思われる見解は、新型コロナウイルスは空気 感染 (飛沫核感染) しないので新型コロナウイルスの飛沫核には感染活性が無いとする見解で あ る。他の見解は、新型コロナウイルスは空気感染 (飛沫核感染) するので飛沫核の一部には感染活性を持つ物が存在するという 見解である。前者の新 型コロナウイルスの飛沫核には感染活性が無 いとする見解によれば、マスクを完全に乾燥 させれば新型コロナウイルスは飛沫核となり失活する (感染活性を失う) のでマスクを完全に乾燥させれば再使用に問題は無い事となる。
    ところが、
Neeltje van Doremalen らによる 『Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1 』 (注3) によれば新型コロナウイルスのエアロゾルには空気中で3時間も感染活性を残 存したウイルス粒子が存在する との事であり、新型コロナウイルスが飛沫核状態で感染活性を有し飛沫核感染 (空気感染) する可能性が排除 できない。 そこで、飛沫核感染 (空気感染) の危険性を前提として、Chin AWH らによる『Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditions』 (注4-1) におけるマスク外側表面に付着した飛沫中における時間経過による感染活性を有する新型コロナウイルスの量の推移のデータ (注 4-2) を前提にして、「陰 干し法」の安全性の程度を以下で考察する。

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   上掲のChin AWH らによる実験データの表では活性ウイルス量が対数表示されている (注4-3)マ スク外側の飛沫に含まれる活性ウイルス量の平均値は当初は10の5.78乗個であったが、一日経過後には10の4.73 乗個になり、活性ウイルス量は約10分の1に減少している。(ただし、活性ウイルス量が約10分の1に減少しても 感染力があるのでマスク表面を触った場合は手を洗わねばならない。)

   
陰干しによる乾燥によって、マ スクのフィルターに捕集された飛沫が飛沫核となって一 旦は一部がフィルターから遊離し、その一部がフィルターを通過してしま うが、それは全部ではなく一部であるので、乾燥によって遊離してフィ ルターを通過する飛 沫核中の活性ウイルス量が当初の10分の1になれば、マスクのフィルターを通過 する活性ウイルス量は、当初にマスクに付着したウイルス量の 数十分の一以下であると考えられ、概 ね実用的安全性が確保できると言えるだろう。




「陰干し法」以外の方法について :

   マスクの消毒用に次亜塩素酸水・スプレーやアルコール・スプレーや銀イオン・スプレーが市販されている。自己責任で購入・ 使用を検討されたい 。ここで、「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」は別物であ るので注意すべきである。また、銀イオン・スプレーや純銀ナノコロイド・スプレーは即効性が無いため、スプレーの効果が出るのに数時間かかる事に注意を要 する。
   できれば厚生労働省か経済産業省か 研究機関か大手マスコミでマスクへの次亜塩素酸水スプレーやアルコール・スプレーや銀イオン・スプレーや純銀ナノコロイド・スプレーの効果及びマスクの劣 化の有無を実験して結果を公表していただきたい ものである。
   ちなみに、私は次亜塩素酸水・スプレーとアルコール・スプレーを購入・備蓄したが、消毒が有効でマスクを劣化させな い事が確認されるまでは単に陰干しだけで対応する予定であるが、子供の手の届かな い暖かい場所で陰干しできない方や24時間以上の陰干しができない方は「次亜塩素酸水スプレー法」を考慮されたい。
   尚、全国マスク工業会は使い捨てマスクは洗うと機能が落ちるので洗う事を勧めないとしながらも、やむをえない場合は、中性 洗剤で押し洗いして十分にすすいで十分に乾燥させる事としている (注5) 。また、台湾の台北政府の閣僚の唐鳳(オードリー・タン)氏はtwitterで日本語で旧式の電気炊飯器を利用した消毒方法をで 紹介している (注6) 。ちなみに、マスクを洗濯機で洗濯すると性能が相当程度劣化する事は奥田知明・慶応義塾大学准教授がYouTubeで紹介してい る (注7)

2020年4月19日 ( 2020年4月6日記事は こちら、2020年2月24日の旧記事は こちら、 2015年5月21日の魚拓は こちら、 2009年6月3日公開の旧記事は こちら。)

目次

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


(注1) マスクを陰干しする場所の温度が低いとウイルスが失活しにくいので、暖かい場所で陰干しする必要がある。 10度未満の低温の場所でしか陰干し できない場合は2倍以上の陰 干し時間が必 要になる。これが「陰干し法」の最大の欠点であ り、子供の手の届かな い暖かい場所で陰干しをして完全に乾燥させ る事が困難な場合は上述の「次亜塩素酸水スプレー法」が第一選択肢となるだ ろう。

(注 2)
   咳やくしゃみの飛沫は粒径によって挙動が異なる事は厚生労働省がYouTubeに投稿した下記の動画からわかる。直径1mm以上の大粒の飛沫の中には2m強の距離を飛行するも のもある。マスクに直径1mm以上の大 粒の飛沫の直撃を受けた場合は、含有ウイルス量が膨大で非常に危険なので、安全な場所に到達しだい予備の新品のマスクと交換すべきであ る。

[ マスク着用の重要性(インフルエンザをうつさないために) ]

https://www.youtube.com/watch?v=9Mkb4TMT_Cc

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(注3) 下記urlで The New England Journal of Medicine のホームページにおいて公開されている。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2004973?query=featured_home


尚、大西淳子氏による日本語の紹介記事が
日 経メディカル
にある。
 
[ 物に付着したSARS-CoV-2の感染力持続時間 ]

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202003/564924.html


(注4-1) 下記 urlで The Lancet のホームページにおいて公開されている。
 
https://www.thelancet.com/journals/lanmic/article/PIIS2666-5247(20)30003-3/fulltext


尚、大西淳子氏によ る日本語の紹介記事が日経Goodayにある。しかし、時間経過による感染活性を有する新型コロナウイルス の量の推移のデータは紹介されていない。

[ 新型コロナ、サージカルマスクの表面で7日間感染力を示す ]

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100031/041700679/


(注4-2)  Chin AWH らによる『Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditions』 のデータは下記urlの Supplementary appendix にある。

https://www.thelancet.com/cms/10.1016/S2666-5247(20)30003-3/attachment/34ed069e-7268-42ae-8627-df3aa869d81b/mmc1.pdf



(注4-3) Chin AWH らによる『Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditions』 の実 験データの Supplementary appendix 中には 自 然対数底のネイピア数による指数関数で近似されたグラフが示されている が、その初期の半減期 (Short half-life) の値から表の"Log"は常用対数と 考えられる。おそらく、グラフ作成ソフトの利用でネイピア数による指 数関数で近似しただけなのであろう。


(注5)
下記urlのYahoo!ニュース (
ハフポスト) 記事参照。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200305-00010001-huffpost-soci


(注6) 下記urlのAudrey Tang 唐鳳のtwitter記事参照。

https://twitter.com/audreyt/status/1245379816825606146



(注7) 下記urlの奥田知明・ 慶応義塾大学准教授によるYouTube投稿動画参照。

https://www.youtube.com/watch?v=juxqWb9nssg