3M社製の排気弁付きマスクの感染症対策での使用における危険性

3M社製排気弁付きマスクを感染対策として着用した場合に、排気弁を覆うカバーが排気弁の下部の 可動式開口部を一部しか覆っていないため、咳き込んでいる感染者に顔を近づけた場合に(息を吐くと)2mm程度開く排気弁下部の 可動式開口部から1mm程度の飛沫が侵入する危険性が ある。くしゃみや咳の直径1mm以上の飛沫は口から飛び出た直後は高速だからである。

3M-9211_valve_open.jpg  3M-9211_s.jpg 3M-9211_valve_closed.jpg

尚、この危険性はフィットテストでもチェックされていない盲点である。

   以下において、上述の危険性を解説するが、その前に、3M社製排気弁付きマスクの排気弁とその作動について紹介する。

3M社製排気弁付きマスクの排気弁の形状について:

   まず、3M社製マスクの排気弁の形状であるが、実際のマスクは排気弁がカバーで覆われているため排気弁の一部しか見えない (注1)。そこで、3M社が宣伝用PDFでカバーを外した写真があるので、そ れ を示す。(ちなみに、3Mジャパン社は「新型感染症対策」として広告している。)

https://multimedia.3m.com/mws/media/984748O/ohs-475-hc.pdf

3M_PDF_9010V.jpg


3M社製排気弁付きマスクの排気弁の作動について:


   また、3M社の排気弁付きマスクの実際の作動の動画撮影も私には困難なので、下記urlでの3M ジャパンの投稿によるYouTube動画を参照されたい。

https://youtu.be/tfjcK1XiDtY?t=16



下方から飛来する高速の直径1mmの飛沫が3M社製排気弁付きマスクの排気弁から侵入し うる理由の模式図による解説:



   排気弁の模式図と直径1mmの高速の飛沫が排気弁下部からマスク内部に飛び込んで侵入しうる理由を以下に図示する。


mask_valve_close.jpg  mask_valve_open.jpg  mask_valve_open_air.jpg  mask_valve_open_1mm-droplet.jpg  mask_valve_open_droplet.jpg



3M社製排気弁付きマスクの排気弁から実際に直径・約1mmの飛沫が侵入した疑いのある事 例:

   クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から感染者を搬送して感染した救急隊員は読売新聞オンライン記事 (注2) の写真からすると3M社製の排気弁付きマスクを着用していた可能性が高く、横浜市消防局救急課に問い合わせたところ3M社製排気弁付き型番「9211」 N95マスクを着用されていた事が判明した。(ちなみに、3Mジャパン社は「パンデミックのために備蓄しやすい」として広告している。)

   もし仮に感染者搬送時に、上述のごとく1mm程度の飛沫が排気弁から侵入すれば、直径1mmの飛 沫は飛沫としては巨大な部類に属し 含有ウイルス量も莫大なため短時間で発症した可能性が高い。
   尚、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で検疫を行った検疫官が3名も感染するという異常事態も発生しており、横浜検疫所に電話で問い 合わせ、電話対応の事務職員を介して公表する事の重要性・必要性を説いて説得したが着用していたマスクのメーカー名・型番は秘匿された。メーカー 名・型番の秘匿の理由すら秘匿された。極めて残念である。ちなみに厚生労働省・健康局・結核感染症課の雨貝氏も注意喚起に消極的であり、業務上過 失致傷罪になる可能性を警告しておいた。

関連記事:

[ 新型コロナウイルス 対策でフェイス・ガード抜きの排気弁付きマスク使用は危険 ]

3M社の対応につい て:

   上記の危険性を3Mジャパンに対して電話で伝えたところ (注3)、 排気弁の付いたマスクは(産業用の防塵マスクであって)医療用としては紹介してい ない旨の言い逃れをした (電 話録音 6分目以降参照)。しかし、実は3Mジャパンは感染症対策・パンデミック用として広告している (注4)



FAQ (典型的な疑問に対する回答):

(疑問):  3M社の排気弁付きN95マスクやDS2マスクは、フィットテストで微粒子遮断が確認さ れているので、飛沫は遮断できるはず。・・・・・(厚生労働省・検疫所業務管理室・コイデ氏の疑問を一般化)

(回答):  フィットテストはブラウン運動をする微小飛沫に対するテストであって口から飛び出た直後は口から50cm以内では近似的に直線的に空気抵抗の下で放物運動 する大粒の飛沫に対するテストではない。 尚、咳やくしゃみの飛沫は粒径によって挙動が異なる事は厚生労働省がYouTubeに投稿した下記の動画から明らか。

[ マスク着用の重要性(インフルエンザをうつさないために) ]

https://www.youtube.com/watch?v=9Mkb4TMT_Cc

2types_droplet-behavior.jpg



応急対策 :

   排気弁の下方から飛沫が飛び込むのを防止する応急対策として、排気弁のカバーの下部にメンディング・テープを張り付ける方法を提案する。 尚、フェイス・ガード (「フェイス・シールド」または「防災面」という名称でも販売されている) を着用し、顔面を感染者に近づける際にはフェイス・ガードと顎 (アゴ) の隙間から飛沫が飛び込まないよう顎を引いた姿勢を採るのが望ましい。
   尚、なぜフェイス・ガード併用を推奨するかというと咳き込む感染者の顔面の至近距離では上述のように感染者が下方に位置する場合だけでなく 同じ高さでも水平方向から大量の飛沫を浴びると危険だからである。3M社製排気弁付きマスクのように下方に重大な脆弱性の無い他社製の排気弁付き マスクでも極至近距離の水平方向から大量の飛沫を浴びれば飛沫侵入の危険性があるかもしれないので、3M社製排気弁付きマスクに限らず他社製の排 気弁付きマスクでも極至近距離で咳き込む感染者に対応する場合にはフェイス・ガードの併用を推奨する。

emergency-measures.jpg


2020年4月24日 ( 2020年3月1日版は こちら、 2020年2月25日・当初版は こちら。 )
目次

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp


 (注1)  「実際のマスクは排気弁がカバーで覆われているため排気弁の一部しか見えない」事を私の手元にある3M社製・排気弁付きマスク・ 「9211」(N95規格マスク) の写真を示す。排気弁はカバーに覆われ、下部の一部しか見えない。

3M-9211_valve_closed.jpg  3M-9211_valve_inside.jpg


(注2) 下記urlの2020年2月16日付け・ 読売新聞オンライン記事・[ 横浜の救急隊員、防護具を着用しても感染…市は困惑「想定外」 ] 参照。

 https://www.yomiuri.co.jp/national/20200216-OYT1T50085/

ambulance-crew-Yokohama.jpg


(注3) 3Mジャパンが問い合わせ用ページで紹介した電話番号 (0570-011-321) に2020年3月3日に電話した。その電話録音は こちら。3分18秒まで保留状態であり、実際の会話は3分19秒以降である。医 療用としては紹介してい ない旨の言い逃れは6分以降にある。


(注4) 型番「9211+」・N95規格マスク ( 型番「9211+」マスクは旧型番「9211」を改良した後継モデル) についての広告用ホームページでは「災害やパンデミックのために備蓄しやすい折りたたみ式 でコンパクトな製品です。」としている。

型番「9010V」・N95規格マスクについての下記urlの広告用PDFでは以下のごとく新型感染症対策用製品としてPRしている。

https://multimedia.3m.com/mws/media/984748O/ohs-475-hc.pdf

>新型感染症対策やPM2.5対策にも安心してご使用頂ける、
>米国NIOSH(国立労働安衛生研究所)による認定を受けたN95マスク。


型番「9926-DS2」・DS2規格マスクにつ いての広告用ホームページでは「災害やパンデミックのために備蓄しやすい」としてい る。