国連憲章では中華民国が常任理事国?

 

現在、台湾(中華民国と自称)は国連非加盟で中華人民共和国(本土中国)が国連常任理事国です。しかし、国連憲章の文章では今(2004年10月14日)でも「中華民国」が安全保障理事会の常任理事国となっています(国連憲章・第23条1項)。

http://www.unic.or.jp/know/kensyo.htm (国連広報センターHP:日本語)

http://www.un.org/chinese/aboutun/charter/charter.htm (国連HP:中国語・簡体字)

http://www.un.org/aboutun/charter/index.html (国連HP:英語)

これはなぜかと言うと、国連憲章が作成された1945年時点での中国の正統政府が中華民国政府であったからです。そして、中華民国政府は中国本土の実効支配を失い台湾に逃れてきた後も1971年まで国連では中国を代表する正統政府として安全保障理事会に代表者を送っていたのです。しかし、それはおかしいという事で、1971年に国連としても中華人民共和国政府を中国の正統政府と認めるべきというアルバニア案が国連総会で決議(第2758号決議)されたのですが、国連憲章の文言は改正されずに「中華民国」のまま残っているのです。尚、国際法では「中華民国」とか「中華人民共和国」という言葉は中国の呼称にすぎないと考えますので、アルバニア案決議(国連総会第2758号決議)以降、国連憲章の「中華民国」という文言は中国を意味するものとして実質的には「中華人民共和国」と読み替えているのです。

http://www.un.org/documents/ga/res/26/ares26.htm (国連HP:国連総会第2758号決議

 

つまり、「中華民国」という名称はかつての中国の正統政府の国号であるとともに、現在(2004年10月14日)でも(たとえ中華人民共和国と読み替えられているとはいえ)国連憲章の文言に残存する由緒ある名称なのです。台湾の前総統の李登輝は「中華民国」の呼称を止めるべきだと主張しますが現在の総統の陳水扁は独立を目指していながら「中華民国」の呼称を変更しようとしない理由の一つが「中華民国」という名称の持つ価値だろうと思われます。

台北政府が単独で武力による大陸反攻を目指すのは不可能に近いですが、台湾総統の陳水扁は中国本土で「天安門事件」を越える大混乱が起きた場合には「中華民国」という名称が戦略的価値を持つと考えているのかもしれません。現在の中国本土の状況では考えられませんが、国連憲章中の「中華民国」という文言が改正されなければ、もし万が一にも将来、「天安門事件」を越える大混乱が起きて北京政府が民主活動支持者等を大量虐殺・大弾圧をすれば、アメリカが国連総会に国連憲章の文言にある「中華民国」の正統政府として台北政府を国連に招請しようという「逆アルバニア案」を提出をほのめかす可能性があります。(中華人民共和国政府が中国本土を実行支配し続けている限りはそのような事が決議される事はないでしょうが、揺さぶりのカードとしてちらつかせる可能性はあります。)

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2004年10月14日

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp

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