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「台湾人」「台湾語」という言葉の図々しさ

 

 

「台湾人」と自称するのは漢人です。台湾先住民は「原住民」と自称します。

   「台湾人」という言葉から台湾の先住民を連想する日本人がいるかもしれませんが、日常「台湾人」と自称してるのは(漢民族系)本省人すなわち日本領時代から台湾に住んでいた漢人入植者(及びその子孫)です(参考文献および参考HP参照)

   台湾の先住民は通常は「原住民」と自称します(参考文献および参考HP参照)

 

「台湾語」は中国語福建南部方言です。

   「台湾語」と言うとあたかも台湾の先住民の言語のように誤解する日本人がいるかもしれませんが、「台湾語」とは中国語福建南部方言なのです(参考文献および参考HP参照)。台湾の人口の大半は中国本土福建省からの移民の子孫なので彼らの生活言語である中国語福建南部方言を日本領時代以降「台湾語」と言っているのです。ただ、中国語の方言といっても中国語福建方言は標準中国語である北京語とは発音が非常に異なるそうです。(中国語福建南部方言は中国語南方方言で北京語は中国語北方方言です。日本で「呉音」という漢字の読み方が昔の中国語南方方言であり、日本で「漢音」という漢字の読み方が昔の中国語北方方言です。おおざっぱに言うと、中国語福建南部方言は漢字の発音が「呉音」に近いようです。)

 

台湾における「新台湾人」という言葉と日本における「新平民」という言葉の類似性

   「台湾人」という言葉は日本領初期に先住民を蕃人とか生蕃と呼んで蔑視し人間扱いせず、漢人移民のみが勝手に「台湾人」と自称した先住民蔑視の歴史的経緯を持つ言葉です。「台湾人」という言葉が台湾の多数派である福建系移民の自称として使われている不具合を打破するために李登輝が「新台湾人」という言葉を造ったようですが、台北市長の馬英九のような政治家等が政治的意図で使ったくらいで定着してないようです。

   そう言えば、日本でも明治維新に新たに平民になった被差別部落民を「新平民」と呼んでいたのと似ている面もあるでしょう。被差別部落民が喜んで「新平民」と自称したとは思えません。それと同じで台湾でも、多数派である福建系移民が「台湾人」と自称するのに少数派が「新台湾人」と自称するのは屈辱的なのが「新台湾人」という言葉が日常語として定着しなかった原因でしょう。

 

公用語でもないのに「台湾語」、台湾が国名でもないのに一部の外来者だけ「台湾人」

   仮に台北政府の主張どおりに台湾が「中華民国」として独立国だとしても先住民でない漢人移民が「中華民国人」「中国人」と言わずに「台湾人」と自称するのはおかしな話です。

   また、台湾の公用語は北京語(ただし台湾では「国語」と称し字体・発音は20世紀前半のものを踏襲し日本語・英語の影響も大きい)です。台湾の多数派言語の中国語福建南部方言は公用語ではありません。(ちなみにスイスでもスイス方言ドイツ語が多数派ですが公用語になっているのは標準ドイツ語です)そして、台湾の多数派言語の中国語福建南部方言は先住民の言語でもありません。

   台湾の多数派である「台湾語」を話す「台湾人」すなわち福建系漢人移民が台湾独立に最も熱心なのですが、独立を目指せばこれから独立戦争を戦わねばならないかもしれないのに、いくら多数派が使ってるからといって公用語でも先住民の言語でもないのに中国語福建南部方言を「台湾語」と称し、多数派である日本領時代からの漢人移民(およびその子孫)である(漢人系)本省人を実質的に意味する「台湾人」(特に狭義には福建系のみを指すこともあるそうです)と自称して台湾独立運動をし、しかも徴兵制度によって中国人意識があって中国本土と戦いたくない者まで強制的に兵役につかせるというのはあまりに多数派の横暴ではないでしょうか?「台湾語」を話す「台湾人」すなわち福建系漢人移民を名実ともに台湾の御主人様にするために他の言語を話すグループが奉仕させられる結果となるからです。しかも、台湾の歴史において彼らはお互いに相争って戦った歴史があるのです。独立前からこういう状態ならもし独立すれば余計に「台湾語」を話す「台湾人」すなわち福建系漢人移民が多数派として台湾の御主人様として幅を利かすのではと危惧されます。

   この事は独立運動によって多民族民主国家となったスイスと比較すれば明白でしょう。言語的・民族的構成は台湾とスイスは似ています。しかし、「スイス人」という言葉はスイス国民全体を意味します。多数派のドイツ語系スイス人のみを意味するものではありません。また、(スイス方言)ドイツ語はSchwyzedütch (Schweizerdeutsch)すなわちスイスのドイツ語です。ドイツ神聖ローマ帝国から独立を勝ち取っても、ドイツ語系スイス人はスイスの御主人様面はしていません。


参考文献および参考HP

「台湾人」という言葉についての参考文献

(1) 小学館「日本国語大辞典」(昭和49年11月1日)第1版第1刷

*****「台湾人」*****

>台湾の住民で、一般には台湾に移住した中国人。

>形質、言語ともに中国系。主に福建省から移住した福老系と広東省からの客家系に分かれる。

>16~17世紀以降さかんに移住し、原住の高砂(たかさご)族を圧迫、17世紀末清国が領土化し、

>台湾の支配者となった。

 

(2) 「広辞苑」(第二版・1969年)・・・・・最近の広辞苑には原住民差別用語のためなのか載ってないようです。

*****「台湾人」*****

台湾の住民で、一般には漢人種(過去において中国から移住したもの)である本島人をいう。

>人種学上、福建省から移住した福老と広東省から移住した客家(はっか)とに分かれる。

 

「台湾人」という言葉についての参考HP

(1) 台北政府日本語広報HP・「台湾のしおり」

「民族と言語」

http://www.gio.gov.tw/taiwan-website/abroad/jp/glance/ch3.htm

 早い時期に大陸から移住してきた漢人は「台湾人」とも呼ばれ、主に広東省から来た

>客家(全人口の15%)と、中国東南部の福建省の南部から来た閩南人(全人口の70%)の

>二つのグループから構成されている。

 

(2) 「国民新聞」HP記事

「先住民族、本省人、外省人」 文化、民族性に優劣はない 

by フリー記者・山田智美

http://www.kit.hi-ho.ne.jp/kokumin-shinbun/H14/1409/140962yamada.html

>「君は先住民族なのだから、本当の台湾人だね」 と、最近、台湾へ移り住んで来たオーストラリア人に

>尋ねられた タイヤル族の友は、少しとまどっていたが 「僕達は原住民で、台湾人というのは平地人の

>ことです」 と答えた。  オーストラリア人は意外そうな表情を見せた。彼の解釈では、 原住民はさしずめ

>ネイティブ・タイワニーズ、平地人はハン・ タイワニーズとでも分けられるのだろうと想像していたからだ。  

>原住民にとって「台湾人」といったら平地に住むbinびん(門+虫)南系 の本省人を指す。

 

「台湾語」という言葉についての参考文献

(1) 中国の諸言語」 S.R.ラムゼイ/著 高田 時雄 他 訳 大修館書店

(2) 「台湾語会話」 (第2版) 樋口靖 著 東方書店

(3) エクスプレス台湾語」 村上 嘉英著 白水社

 

「台湾語」という言葉についての参考HP

(1) Koichi Murata さんのHP 「旅目写真帳」の「台湾語って?」

http://www.ne.jp/asahi/k-murata/travel/tw-lang/tw-l0.html#Anchor7372

台湾語とは中国の8大方言と言われるものの一つの福建語を母胎としています。

 

(2) 有限会社パシフィックエンジニアリングHP 

http://www.pacific-en.co.jp/x260-1-2.html

福建語

>中国語の閩(Min3、ビン)方言。 大きく南北に区分され、それぞれ「閩南話」、「閩北話」と呼ばれる。

>閩南話はいわゆる「台湾語」。なお、「閩(Min3、ビン)」は福建省の別名。

 

(3) おケイコ大図鑑HP

http://www.isize.com/study/searchlist/okeiko/language/language80/

中国語

アジア唯一の国連公用語でもある中国語。

>一般に中国語というと北京語を基礎とした中国の統一公用語『普通話(英: Mandarin)』を指し、

>香港や広東省で使われている広東語、上海を中心とする上海語、台湾及び福建省で使用されている

>台湾語(福建語)などはいずれも中国の方言となる。


2004年4月19日

浅見真規 asami@mbox2.inet-osaka.or.jp

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