[フジモリ氏の日本国籍と日本政府のトリック]に関する

御質問と回答(FAQ)


ここでは、実際にあった御意見・御質問(一部変更あり)とそれに対する私の回答を示します。尚、ページ専用掲示板にも別個の御指摘・御質問と回答があります。

尚、名称で(FAQ)としていますが、よくある御質問ではなく、いずれの御質問もたった1回しかありませんでした。しかし、その趣旨から、(FAQ)とさせていただきました。


御質問1.『選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。』という条文(第16条第1項)は、『外国の国籍を離脱しなければならない』となっているのじゃないから、離脱しなくても法律違反にはならないのではないでしょうか?

返答 私は法律違反とは言ってません。日本の国籍法に巧妙なトリックがあり、また日本政府は非常に恣意的な運用をしたと言っているだけです。

尚、私は、フジモリ氏がトリックを使ったとも言ってません。いくら努力しても国籍の離脱を認めない国の場合には、自由意志で(当該外国籍を前提とする)外国公務員にならない限りは結果として外国の国籍を離脱できなくとも問題はないと思います。

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御質問2.国籍法16条2項は日本国籍の選択の宣言をした二重国籍保有者が自己の意志で外国の(当該外国籍を前提とする)公務員になった場合で日本国籍選択の趣旨に著しく反すると認められるときは、法務大臣が「日本の国籍の喪失の宣告をすることができる」と規定しますが、この場合に『できる』という文言は、国益を損う等、相手があまりに酷いときに限り最後の手段として『〜できる』と規定しているのであって、『〜できる』と『〜しなければならない』の間には天と地ほどの差が有るのではないでしょうか?

返答 確かに、『できる』という文言は場合によっては「しなくてもよい」という意味なのは事実です。しかし、外国の公務員と言っても教員とか郵便配達員とかのように国家統治機構にほとんど無関係なものから国政に重大な影響を与える国会議員・閣僚・大統領まであります。昨年11月末にフジモリ氏の日本国籍を日本政府が公に確認するまでは国籍法16条2項の『できる』とは選挙で選ばれた公務員や閣僚・高級官僚等を前提にしていたはずですが、その判断基準を一律に明確にする事は諸外国の職制等が異なる事から困難であるため『〜できる』と任意性持たせて規定した理由と思われていたはずです。なぜなら、日本国籍喪失宣告の判断材料として、(外国の公務員の職への)「その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反する」ということが規定されているからです。それゆえ、フジモリ氏個人が日本の国益にプラスか否かで判断するのではなく、外国の大統領職への就任が「日本の国籍を選択した趣旨に著しく反する」か否かで判断すべきなのです。

また、あなたは『できる』という文言は非常に特殊な場合のみを対象とするように解釈されておられるようですね。しかし、国籍法16条1項の外国籍離脱努力等との兼ね合いから、外国籍を前提とする高級外国公務員の職に就いた場合には原則として「しなければならない」と解釈すべきものでしょう。ただし、教員とか郵便配達員のように国家統治機構にほとんど無関係な職に生活の糧としてやむなく就職した場合には日本国籍選択の趣旨に著しくは反しないものと考えられますので日本国籍喪失宣告はできないと考えられます。

そして、ペルーのような海外から見ればフジモリ氏の政敵やペルーのマスコミもフジモリ氏が日本国籍を保有しているとは気づかず、したがって非難もできず、ペルー国民もフジモリ氏が日本国籍を保有していない事を前提に投票したはずです。このことが最大の問題なのです。

以上から考えるとフジモリ氏に国籍法16条2項の日本国籍喪失宣告をしないということは一体なんのために国籍法16条2項があったのかという国籍法16条2項の存在意義が疑われるもので、国籍法16条2項がダミー条項だと非難されてもしかたのないものでしょう。

尚、『できる』という文言があるからといって、日本国籍を持つ日本国民に対する対応において恣意的に差別することは日本国民に対する法の下の平等を定めた憲法14条1項にも反します。外国人に日本国籍を認めるか否かの場合には、おおせのように日本の国益から恣意的に判断するの事が可能ですが、日本国民の日本国籍喪失において差別する事は憲法上許されないのです。この場合に『できる』という文言が、国益に反する者にのみ対し『〜できる』と規定していると解釈するのは、旧憲法下での「非国民」的発想でしょう。日本国民に対する法の下の平等を定めた憲法14条1項から言っても判断基準は、その者が日本に有益か否かではなく、当該外国公務員の職への就任が「日本の国籍を選択した趣旨に著しく反」しないか否かのみで判断しなければなりません。恣意的な判断が許されないことは法務省民事局第1課国籍係・中村和博係長にも電話で確認いたしました。

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御質問3.国際法上、政治犯不引渡し原則というものがあり、犯罪人が、政情不安定な国に引渡されれば、公正な裁判の「保証がない」場合に関しては引渡しが拒否される場合が数多くありますよね。フジモリ氏に関してはこの原則が妥当する可能性もあると考えますが、どう思われますか?

返答 確かにフジモリ氏をペルーに直接引渡してペルーで直接裁判すれば、感情的・政治的にフジモリ氏が不利な裁判を受ける可能性があるのは事実でしょう。
それも書くべきだったかもしれません。別に隠していた訳ではなく、国際司法裁判所で日本がそれを主張すればよいわけです。日本は当然、それを主張するでしょう。
ここで、あのパンナム機爆破犯がオランダの臨時スコットランド法廷で裁かれたことを思い出してください。
フジモリ氏の場合もオランダに刑事裁判管轄のある臨時ペルー法廷を設置してそこで裁けばよいのではないでしょうか?
尚、この点については私もいずれはっきりと調べてみたいと思います。(調べもせずにあいまいな返答ですみません。)

それから、政治犯とは政治権力に対する何らかの攻撃を容疑事実の要素として行なった者ですが、フジモリ氏は容疑事実時点で最高権力者であったので政治犯にはあたらないと思われます。このことは、たとえばピノチェト氏をスペインへの引渡の可否が争われた英国貴族院でも重要争点は前国家元首としての刑事裁判権免除と健康上の理由だけだったと記憶しています。

さらに、伊秀吉事件では日本の最高裁は「政治犯不引渡し原則」は確立された国際慣習法(憲法98条2項参照)ではないとしているようです。(これも、ヒマがあれば判例集を実際に調べてみたいと思ってます。)

また、ペルーからのフジモリ氏の引渡要求犯罪が不正蓄財であれば普通犯罪ですので、日本国内法の逃亡犯罪人引渡法2条1号の引渡犯罪が政治犯罪であるときには該当しないことになり日本国内法上も問題はないものと思われます。

 

浅見真規 vhu2bqf1_ma@yahoo.co.jp

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